
今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!
【連載第90回目】
南会津で長く愛され続ける名醸造元、開当男山酒造。その創業は享保元(1716)年と古く、創始者の当家3代目渡部開当(はるまさ)の開当がそのまま銘柄となっている。以来14代、300年にわたり寒冷地を生かした独自の酒造りを続けてきた。
雪深い南会津の酒は、風土、伝統、人の技などのテロワールを体現するかのように、その地の静寂、特に冬の夜のイメージが良く似合う。特に福島県オリジナル品種の「夢の香」は、その体現との相性が実に良い。目を閉じ口にする度、新雪の様にふわりと淡く舞い、溶け、香る。沁みていく旨味が、心象をしんしんと染め抜いていく。
静寂の華やかさと寛ぎを一貫して感じさせる美酒は、共に盃を交わす人達を、少しさけ饒舌にする。誰かと語りあかしたい冬の夜に、相応しい1本だ。
■今月の美酒
・開当男山 夢の香 特別純米<福島県南会津郡南会津町/開当男山酒造>

■勝手にペアリングを考えてみた
酒米「夢の香」が持つ、米の旨味と上品な香りの特性をしっかりと出してきた1本。一口目に少しジューシー感ある華やかさがありつつ、後味には福島の酒、特に南会津の酒らしさを感じさせる、穏やかでふくよかな旨味の余韻。肴を選ばない万能の食中酒ではある。和洋中問わず、酸味、辛味、苦味、いずれを合わせてもこなしてくれる。
ここにペアリングを合わせる場合、1月という季節感を考えると、まずは温かいものが良いかもしれない。おでん、煮物などは口に含むと酒が人肌燗に温められて、香りと旨味がより引き立つはず。
南会津ということで、郷土で親しまれているマトンか馬肉と合わせたい感もある。かつてfukunomo2017年の曙酒造の大俵引きと合わせて頂いた、すき焼き用の馬肉+雪下ネギのセットなどがあると、華やかさと特別感があるのでぜひ試したい。冬に彩りを出すには、とても良いと思う。もしくは、馬肉入りハンバーグなどを合わせても面白いかも知れない。すき焼きを合わせた場合、少し豆腐が欲しくなるかな。
また、少しスパイスでアクセントを付けてあげたいので、山椒風味が加わると良し。山椒ニシンはもちろん合うが、主菜を重ねてしまうので、南会津の山椒を使った何かの産品を合わせてあげると良さそう。
さらに地元感を出していくと、〆は奈良屋の截ち蕎麦の乱切りなども良いと思う。美味しい蕎麦は、美味しい日本酒の〆にとても良い。やわらかな香り漂う福島の酒と蕎麦の香りの相性は特に良いので勧めたい。
■今月のマリアージュ/ペアリングセット

・会津銘産 馬肉バラ鍋用<福島県会津若松市/株式会社ハヤオ>
・エゴマ豚ハム(バジルガーリック)<福島県福島市/福島県流通ネットワーク協同組合>
・浅漬セロリ<福島県伊達市/有限会社八島食品>
・あんぽ柿<福島県伊達郡桑折町/感謝農園平井株式会社>
・しじみ海苔<福島県相馬市/株式会社サンエイ海苔>
・会津銘産 馬肉バラ鍋用<福島県会津若松市/株式会社ハヤオ>

まずは馬肉。馬肉は、福島や熊本など一部の地域を除くと割とマイナーながら、実はとても美味しい。特に近年は、牛肉でも「霜降り」ばかりでなく短角牛など「旨い赤身肉」の人気も上昇中。馬肉は脂身が無く淡白でありつつも、口にするたび上等な赤身肉ならではの深い味わいをしっかりと感じさせてくれる。
特に今回は、これを鍋ですきやきの割下と一緒にじっくりと煮込むことで、肉にも出汁が利いて旨味が更に強化される。しっかりと心地良い歯ごたえは、噛むほどに旨味がじわり、じわりと染み出てくる。
蔵元いわく「永遠に楽しめる。すき焼きは卵が欲しくなるが、無くても満足感ある組み合わせ」──これを聞いたからには当然、手元にあった新鮮な生卵を合わせてみる。
生卵のとろりとした、少しひんやりした口当たり。そこに甘しょっぱい、すき焼き風味が利いた熱々の馬肉と野菜が絡む。さらに、お待ちかねの酒を口に含む。ほのかな吟醸香の直後から、ぬる燗に次第に温められて立つ酒のふくよかな香りと旨味が口内に充満していく。
旨い。なんだこれは。私の口の中は今、暖流の黒潮と寒流の親潮とがダイナミックに重なる「潮目の海」。ひんやりと熱々とがぶつかり混じり合う旨味の饗宴。世界有数の漁場とも謳われる福島・常磐沖を思わせる豊かな恵みが波のように寄せては返す。
酒が進む。旨い。噛む。噛みしめる。とろりとした卵の食感、すきやき風味の甘、塩、コク。さらに酒。なるほど、確かにこれは永遠に楽しめてしまう。このままでは、馬肉のすき焼きだけで酒が尽きてしまうので、次を楽しもう。
・エゴマ豚ハム(バジルガーリック)<福島県福島市/福島県流通ネットワーク協同組合>

ここに、さらにエゴマ豚のハムを追加参戦させる。しかもこのハムは、バジルガーリックの風味だ。いいぞ。まさに欲しかったアクセント。待っていた助っ人だ。
一口齧れば、バジルの香りとガーリックの旨味が、酒のフルーティさとの掛け合わせで少しの意外性を発揮する。そこに、このエゴマ豚の芳醇な旨味だ。口当たりは滑らかに、しっとりとした少し脂感もある肉の旨味が口内に広がっていくのは、馬肉とはまた違う豚肉ならではの魅力と趣がある。
・浅漬セロリ<福島県伊達市/有限会社八島食品>

続いては、浅漬けのセロリ。香味野菜のセロリの風味と香りを酒と合わせてみると、これが中々に小気味良い。そこにシャキシャキとした食感も輪をかける。
何より、先ほどまで楽しんでいた馬肉とすき焼きの風味に香味が合わせることで、これが箸休めと同時に良いアクセントに変わる。酒が持つ、ちょっとした茶目っ気のような香りと合わさって、変化球のように全体の印象を複層的に広げてくれる。
音楽もそうだ。いかに素晴らしく調和のとれた旋律であっても、最初から最後まで単調になり過ぎてはいけない。少しの変化や意外性を重ね演出してあげることで展開が広がる。その変化を楽しむのも、ペアリングの醍醐味。実に酒が旨い。
・あんぽ柿<福島県伊達郡桑折町/感謝農園平井株式会社>

福島の隠れた名産「あんぽ柿」。あんぽ柿というのは、福島県伊達市梁川町で江戸時代から作られていた干し柿に、大正時代に硫黄燻蒸技術が確立された特産品。一般的な干し柿に比べて非常に鮮やかな色合いと、元が渋柿から作るセミドライフルーツとは思えないほどのジューシーさがたまらない。
それはまさに、葡萄を樹上で完熟させて醸した貴腐ワインを思わせる芳醇さ。口にするたびにほとばしる、しっとりとした旨味、甘味。これらが噛むたびにじゅわじゅわと広がってくる、福島ならではの冬の味覚。そこに酒を合わせると、非常に瑞々しい風味と柔らかな酸味がほとばしり、双方の魅力が一層際立つ。生産者や、蜂屋柿(はちやがき)や平核無(ひらたねなし)などの品種ごとに味わいの違いを楽しめるのも良い。
欧米ではワインにドライフィグ(干しイチジク)を合わせることが珍しくないものの、あんぽ柿のポテンシャルはそれ以上。たとえば、更にクリームチーズと生ハムなどを合わせてみても、驚くほどのペアリングを見せつけてくれる。
「あんぽ柿」を、世界はまだ知らない。むしろ、日本国内でもまだ知らない人は少なくないかも知れない。福島が発明した隠れた逸品を、ぜひこの機会に楽しんでほしい。
・しじみ海苔<福島県相馬市/株式会社サンエイ海苔>

最後は、「しじみ海苔」。
相馬市の松川浦は福島県唯一の潟湖(ラグーン)で、陸地を挟んだ太平洋とのコントラストが非常に美しい景勝地。(「ふくしまの旅」より)
昔から海苔養殖が盛んで、高品質の焼き海苔やアオサ海苔などの名産地でもある。
この地の老舗であるサンエイ海苔は、地元の海苔のみならず、国内外の多様な地域の海苔と食文化の魅力を引き出すプロフェッショナル。海苔を使った新しいおつまみや、胡麻油を使った韓国のりの生産なども幅広く手掛けている。
このしじみ海苔は黒々としたスサビノリに、しじみのエキスをたっぷりと含ませるという贅沢仕様。ぱりっとした食感としじみの旨味のコラボレーションが特徴。口の中で酒を含み広がる海苔の香りと合わせ、出汁を味わうかのような旨味もたっぷり。開封してすぐに食べられるのも手軽で嬉しい。
というわけで、今月も美味しく頂いてしまったfukunomo。地元以外では中々手に入れることが出来ない地酒中の地酒や、隠れた銘品が毎月お手元に届くという贅沢は、他ではなかなか味わえない。これも、福島のさまざまな人やモノとの繋がりが深いfukunomoならでは。
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