一口含むと、カラメルにも似た香味から始まる、複雑で深いコクと旨味。そして膨らむ重厚な余韻。(2026年1月|仁井田本家) - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

一口含むと、カラメルにも似た香味から始まる、複雑で深いコクと旨味。そして膨らむ重厚な余韻。(2026年1月|仁井田本家)

今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!

 

【連載第89回目】

驚いた、というのがまず率直な感想。一口含むと、カラメルにも似た香味から始まる、複雑で深いコクと旨味。そして膨らむ重厚な余韻。高級コニャックブランデー、「ヘネシー・XO」を彷彿とさせる。
ところが、口当たりは一転してとても爽やか。古酒の良さと新鮮な吟醸の良さを合わせたような、実に面白い、しかし本当に美味しい酒。さらに、うすにごりの濃淡によって味の変化やグラデーションも楽しめ、飲み飽きない。
そもそも、これ程に多彩な旨味が連立しながら、不思議なほどの調和と軽やかな口当たりに二度驚かされる。この酒に驚かされたのは、もう何度目だろうか。

しかも少し前まで山廃仕込みで造っていたところを、とうとう生酛造り※までしてしまった。酵母も蔵付きの自然酵母を使っているとも聞いてはいたが、本当に「しぜんしゅ」の名の体現を徹底しているのだなと。蔵の信念と美学を強烈に感じさせる1本。
日本酒古来の王道・正統を徹底的かつ一切の妥協無く追及した素材と技術を貫きながら、他に類を見ない全くの新境地を拓いたとさえ言える、唯一無二の味わい。

日本酒、特に生酛造りにこのようなポテンシャルがあったのかと心から感嘆する、ぜひ多くの人に味わって頂きたい美酒。ぜひ世界を驚かせて頂きたい。

【※生酛造りとは、1.江戸時代に主流だった伝統的な日本酒の造り方、 2. 自然のサバイバルとともに乳酸菌を一から育てるプロセスを踏む、3. 野生を生き抜く微生物の営みから出来るたくましい酒質を持ち、パワフルで濃厚、4. 山卸しという米をすり潰す作業を行う、「山卸」とは、酒母を作るタンクにいれる蒸米を、あらかじめ櫂(かい)と呼ばれる棒を使ってすり潰す作業のことです。蒸し米・麹・仕込み水を混ぜたものを小分けし、手で混ぜて仕込む手酛という作業から入れると、長ければ丸1日、2~3時間おきに米をかき混ぜるハードワーク。(SAKETIMESより引用)。「山廃」とは、上記から4の最も過酷な山卸し作業を廃したもの。】

■今月の美酒

・にいだしぜんしゅ “うらっかえる” 生酛純米吟醸 うすにごり<福島県郡山市/仁井田本家>

勝手にペアリングを考えてみた

  心から「旨い」「他にない個性」と驚嘆した1本。一方でペアリングとしては、おそらくオールマイティ。他に無い味わいなので、色々なものに試してみたくなる。そしてつい、饒舌にもなる。

たとえば少し風味が強い肴にも合うと思われるので、まずは焼鳥と豚カシラの串焼きに合わせてみた。
塩、タレ、いずれとの相性も良し。そもそも、酒自体の風味が強めなので自然の素材感を感じさせるもの全般を受け止めてくれる安心感がある。カシラ特有の匂いも、この酒と合わせると全く気にならなくなる。肉汁との掛け合わせもジューシーさをちゃんと引き出してくれる。よしよし、これは食中酒としてかなり秀逸だな。

 続いて、思い切って鰹の刺身とニンニク、鰯の刺身と生姜を合わせてみた。ここまで強い風味のものでも応えてくれるか…?
 これも杞憂、というより思いの他に合う。鰹や鰯の青魚特有の生臭さを消し、ニンニクや生姜の風味さえも酒と喧嘩せずに重なり合って溶けこむイメージ。それによって、旨味も一際立つ。これはむしろ、旬の時期に積極的に合わせても良いくらい。

 ニンニクや生姜でさえここまで合うとなると、他の香辛料の類と合わせても良さそう。カレースパイスや胡椒などとの相性が良いので、これらを利かせた肉料理なども良い。
さらに、この酒は古酒に似た香味がありつつ爽やか、いわば「油溶性」とでも呼べる感覚に油ものに旨味が溶け込む感覚があるので、中華料理なども良し。

 他、ナッツやチーズ、燻製も勿論良し。ブルーチーズやウォッシュチーズなどクセの強いものに積極的に挑戦してみたくなる。
 とはいえ、この時期は12月。季節感も欲しいところ。その点で言えば、アンコウの肝の炙りなどがあれば美味しいと思う。

あるいは、郡山の名物を入れて鯉の旨煮なども良さそう。甘味としては、大黒屋のくるみゆべしとか?胡桃のナッツ感とゆべしのもっちり感は相性良いと思える。

それでは続いて、fukunomoセレクトのペアリングと合わせてみたい。

■今月のマリアージュ/ペアリングセット

・福島名物 そうすけ漬<福島県福島市/福島県流通ネットワーク協同組合>
・手造りレバーペースト<福島県郡山市/矢澤ハム>
・串でんがく<福島県石川郡古殿町/アクツフーズ株式会社>
・白菜の浅漬け<福島県いわき市/西野屋食品株式会社>
・半熟スモークジャンボエッグ<福島県福島市/燻製工房 木香>

 

・福島名物 そうすけ漬<福島県福島市/福島県流通ネットワーク協同組合>

福島県流通ネットワークは、昭和15年から続く老舗お肉店がルーツ。その看板メニューとなっているのが、福島市や伊達市などの県北を中心に、長年地元で親しまれてきた豚の味噌漬け焼きである「そうすけ漬け」。厳選され、旨味をたっぷりと引き出された上質な豚ロース肉に柚子香る特製の白みそを絡めた逸品。
 フライパンにふたをして、ごく弱火でじっくりと炙る。味噌が焦げないように何度もひっくりかえしながら確実に熱を芯までゆっくりと通していく。ロースの脂身から溶け出てきた油でさらに表面と味噌を炙る。最後に少しだけ火を強めて、きつね色にカリっとさせたものを、口の中でお酒と合わせ、じゅわじゅわと音を立てるように絡めながら頂く。
 これは、味噌と豚肉の強烈な旨味が一気に広がると共に、お酒が温められて独特の香りが一層立つ。少し塩味が強めの肉に、酒が炊き立てご飯のように合わせてくれる。豚肉が少しだけ熱いが、これがまた、たまらない。まるで口の中で料理を完成させて、そのまま出来立てをダイレクトに腹の中まで流し込むような感覚だ。身体が全身で、この料理を貪ろうとしている。
特に、うすにごりの中でも濃い目にしたものと合わせると、その感覚が一層強まっていく。仄かに香る柚子風味と、カラメルや燻製のような香味。酒は生酛ならではの力強さ。懐の広さがあるのでジューシーな旨味のコラボレーションがしっかりと感じられる。これは美味しい。

・半熟スモークジャンボエッグ<福島県福島市/燻製工房 木香>

 続いては、同じく県北でお馴染みの「燻製工房 木香」から、半熟スモークジャンボエッグ。その名に違わぬ食べ応えある大きな卵を、とろりとした半熟に仕立てている。
強めの燻製香は今回のお酒に合わせると一層立って、木材が重ねてきた年月を数えるかのように伝えてくる。これは良い香り…
などと、悠長なコメントを問答無用になぎ倒すかのように、次の瞬間からたたみかけてくる半熟の黄身の圧倒的な存在感。とろりと絡みつき、絶対的な旨さの暴力で頭の中を真っ白の白身にしてくる。そこに、酒のカラメルのような甘さ、米らしさを感じる旨さ、じゅるっと味わうジューシーさが溶け込んで、いよいよ思考までも侵食されて溶けてくる。
なんて強烈なインパクトなんだ。こうなると、ハードボイルドも形無しだ。目の前の半熟の魅力にただ溺れ、無心に貪るしかない。これだけ多彩な風味と旨味とが、こんなにも一度に揃って饗宴して良いのか?オールスターか?お誕生日か?走馬灯なのか?
 なお試食では、蔵元のおかみも絶賛だったらしい。曰く「いか人参とのタルタルにしたら美味しそう」これ以上スターを増やすつもりか。そんなの優勝に決まってるじゃないか。

・串でんがく<福島県石川郡古殿町/アクツフーズ株式会社>

 ここで登場するのが、古殿町のアクツフーズからの串でんがく。
まず、こんにゃくと味噌が合わないはずがない。そして、この酒に味噌が合わないはずもない。熱々、ひたひた、ぷるぷるのでんがくは食感も良く、これが中々の良いアクセントに。
なにより、日本古来の伝統の酒造りに、王道の和食を合わせる。赤ちょうちんで仕事帰りにちょっと一杯、のような趣を愉しむ。これ。「こういうのがいい」んだよ。何より、でんがくという食べ物には、子どもの頃に寒空の下の集まりで甘酒とあわせてハフハフいって食べていた個人的な想い出もあって、少しノスタルジックな気持ちにもしてくれる。もっとも、あの頃の私は甘酒があまり得意ではなく、寒いのと無限に注がれるから仕方なく飲んでいたものだが、大人になってこんな酒飲みになろうとはあの頃の大人の誰も思わなかったに違いない。
 それにしても、アクツフーズのこんにゃくは毎度ながら噛みしめるたびに感じる旨味が良い。なんというか、抜群の安定感があるfukunomoの鉄板ともいえるラインナップ。
美味しい。

・白菜の浅漬け<福島県いわき市/西野屋食品株式会社>
・手造りレバーペースト<福島県郡山市/矢澤ハム>

最後の〆は、郡山市の矢澤ハムからのレバーペーストと、いわき市西野屋食品から浅漬け白菜。蔵元のおかみからは、レバーペーストが「とにかくおいしく、また食べたい、のみたいと思える」、白菜漬けは「七味を少しかける、お酒を湯呑みで、こたつで頂く…この三位一体をセットにしたい」とのコメント。

いずれも単品でも美味しいが、私は敢えて両方を合わせて一度に食べてみた。
…というのも、このレバーペーストがまた、臭みやクセが無く食べやすく、とにかく美味しい。これを、敢えて白菜漬けのシャキシャキ感・清涼感と合わせることで、ロールキャベツにも似た独特のペアリングが楽しめる。
特に酒が入って身体が火照ったところに、ひんやりとした白菜漬けの箸休め。これがまず良い。ここに単品では少し芳醇なレバーペーストが絡み、そのスパイスの香りと旨味が白菜漬けと一体化する。これで小洒落たレストランの気の利いたオードブルの完成だ。蔵元お薦めのように、気分次第で七味唐辛子をパラパラと加えてあげると、これもまたアクセントになる。冬場だから、柚子皮などを入れてもいい。
この冷菜の爽やかさと旨さが他の温ツマミの旨さというツマミ同士のペアリングが織り成すグラデーションが、今回の食事全体を綺麗にまとめてくれるという優れものだ。箸も盃も、つい進んでしまう。ほかに、敢えて酒の方をほんのり温めてから冷菜を口にするのも良さそうである。ぜひ、いろいろと試して頂きたい。


というわけで、今月も美味しく頂いてしまったfukunomo。地元以外では中々手に入れることが出来ない地酒中の地酒や、隠れた銘品が毎月お手元に届くという贅沢は、他ではなかなか味わえない。これも、福島のさまざまな人やモノとの繋がりが深いfukunomoならでは。
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