代表社員
四家 久央(しけ ひさお)さん
幼い頃から歴史ある酒蔵に触れていたことから歴史に興味を持ち、大学では歴史学を専攻。いわき市文化財保護審議会員として、地元の文化を守る活動にも力を入れている。
専務
四家 明(あきら)さん
美術系の学校に通った後、四家酒造店に入社。酒造りのほか、ネーミングやラベルデザインも担当している。
五十以上ある福島県の酒蔵の多くは、山側・会津に位置しています。
海側・浜通りに蔵を構えるのは、そのうちわずか三蔵。
そのひとつが、四家酒造店です。
始まりは幕末。
初代の四家又兵衛(しけ またべえ)氏は無類の酒好きで、自分が楽しむために酒造りを始めたといわれています。
そんな初代の心意気を汲んだ『又兵衛』が、四家酒造店の代表銘柄です。
県外にはほとんど出回らず、ほぼ地元・いわきで消費されているという四家酒造店のお酒。
どんなふうに生まれているのか、兄弟で蔵を支えるお二人にお話を伺いました。
■兄弟で歩んできた20年
四家酒造店を率いるのは、久央さん・明さんご兄弟です。歴史が大好きで、大学でも歴史学を専攻した久央さんは、いわき市文化財保護審議会の委員も務めています。「蔵は、酒を造るだけではなく、地域の文化を支える場所でもあったのではないでしょうか」と語り、酒造りだけでなく、地域との結びつきも大切にしてきました。
一方弟の明さんは、美術系の学校に通っていたので、ものづくりが得意。人気銘柄『又兵衛 星と灯台』では、ネーミングやラベルデザインを担当しています。
「似ているところは……あまりありませんね」と顔を見合わせるお二人。異なる強みを持つ兄弟が、酒造りという一つの目標に向かって力を合わせています。

■”試す楽しみ”を味わって
今月お届けした『又兵衛 原酒』は、アルコール度数20度と日本酒としてはかなり高め。実は、日本酒と名乗れるのは22度未満と酒税法で決まっています。これ以上度数を上げたら、「日本酒」とは呼べなくなってしまうのです。ギリギリの線を”攻めている”お酒です。
「好きに飲んでもらいたいですね」と久央さん。「完成した味わいを楽しむのもいいですが、これは『どう飲むか』を試す楽しみがあるお酒なんです。例えば、『どこまで薄められるか』なんて、そんな”実験”をするのも面白いですよ」
ロックならどうか、水割りならどうか――。ここまで飲み手に委ねてくれる酒はなかなかありません。きっと、あなたの日本酒の楽しみ方を広げてくれるはず。自由な発想で味わってください。

■自分たちの手で酒造りを
四家酒造店では、これまで酒造りは杜氏に任せてきました。しかし、今年からは兄弟お二人が蔵に入り、自ら製造に関わるように。「もちろん酒造りの流れは知っていましたが、知識と実践はまったく違いますね。『酒は一人では造れない』と、改めて実感しています」と久央さんは語ります。
明さんは、「まだまだ手探りですが、少しずつでも、自分たちの理想に近づいていきたいです。目指すのは、地元・いわきの魅力を感じてもらえるような味わい。そんなお酒を造っていきたいですね」と話してくださいました。
いわきへの愛情を注ぎながら、新たなステージへと歩み始めた四家酒造店。兄弟二人の挑戦は続いていきます。