地元の人と、地元の米で醸す会津美里町の地酒 白井酒造店《福島県会津美里町》 - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

地元の人と、地元の米で醸す会津美里町の地酒 白井酒造店《福島県会津美里町》

9代目蔵元 白井 栄一さん
1972年生まれ。福島市の大学で経済学を学び、卒業と同時に白井酒造店に入社。1年後に先代が亡くなり、9代目として蔵の代表となる。福島県清酒アカデミーで3期生として学び、現在は経営から酒造りまで、すべてを担当している。

白井酒造店の創業は一七六五年。
当時は、蔵の近くを流れる宮川の名を取って「宮川屋」という屋号でした。

代表銘柄は、地元の方々に長く愛される『萬代芳』と、
信頼のおける地元の提携農家さんの米を使った『風が吹く』です。
『萬代芳』は、令和七年福島県春季鑑評会で金賞を受賞し、
これで十二回連続の金賞受賞となりました。

九代目の白井栄一さんが蔵を継いだのは、二十二歳の時のこと。
営業から始め、一から酒造りを学び、現在は杜氏として酒造りを取りまとめています。
酒造りにもお客様にも真摯に向き合ってきた白井さんのお話を伺ってみましょう。

 

酒造りに向き合うという決意

 大学を卒業してすぐに白井酒造店に入社し、まずは営業を担当していた白井さん。しかし、入社して1年ほどで先代であるお父様が急逝。22歳の若さで、9代目として蔵を継ぐことになりました。
 先代が亡くなってからというもの、売上も取引先も少しずつ減っていったといいます。その状況を鑑みて、営業より酒造りに注力するという決断をします。
「父は、『外に出てどんどん売ろう』という考えでした。私はもともとそういう営業が苦手で……。それなら、無理に販売先を開拓するよりも、お客様が喜んで買ってくれる酒造りに力を入れようと思ったんです」
 こんな白井さんの姿勢は、飲み会の際にも。「自分から日本酒に手を伸ばすことはありません」というのです。蔵元である白井さんが日本酒を飲めば、自然と周りの人も日本酒を飲むことになる。それが無理強いするようで嫌なのだといいます。「みなさんの好きな時に、好きなものを飲んでほしいですから」という言葉に、お人柄が表れています。

地元で愛される食中酒

酒造りの知識が全くないところから、杜氏に教わり、福島県清酒アカデミーに通い、少しずつ学んできた白井さん。今では蔵元杜氏として、酒造りの責任者を務めています。目指すは、「しっかりとした味わいがありながら、きれいなお酒」。毎年、蔵人たちと改善点を話し合いながら、コツコツと改良を重ねています。
 今月お送りしたお酒は、地元の方々に長年愛されてきた『萬代芳 純米酒』です。飲み飽きしない、ホッとする味わいが特徴で、どんな料理にも自然と馴染み、食中酒にぴったり。今年は、少し香りがあるお酒に仕上がりました。福島県外ではなかなか出会えないお酒です。会津美里町の味を、じっくりと楽しんでください。

会津美里の米にこだわって

 白井酒造店の売上の半分ほどは地元・会津で、顔が見える距離にいるお客様が大半です。「地元の提携農家さんや酒販店さんがいたからこそ、ここまでやってきました」と白井さん。白井さんが立ち上げた銘柄『風が吹く』は、その農家さんや酒販店さんが話し合って命名してくれたのだそうです。
 気候が変わり、会津でつくることのできる米の銘柄も変わってきています。「五百万石」をつくる農家が減ってきている中、白井酒造店の『萬代芳』はずっとこの地元の米を使ってきました。地元の酒―”地酒”という文化を継承していくべく、たとえ価格が上がったとしても、この米にこだわっていくつもりです。
 それでも、気候変動は深刻な問題です。「地元に合った米、そして酒を研究していきたいですね」と白井さん。地元のみなさんと手を取り合った酒造りが、白井酒造店の持ち味です。