
今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!
【連載第85回目】
清流のせせらぎを思わせる澄んだ口当たり。杯を傾けるたび、静謐を湛えた水面に落ちる雫。波紋が響き、重なり、やがて大輪の花のようにふくよかな余韻を広げていく。万物が静かに息衝く夏の夜、心に響く旋律のように、飲み手の魂を優しく揺さぶる美酒 。
透明感を湛えた酒は、一口、また一口と、清らかな清水が喉を潤すかのように心身に沁み渡る。口内の温もりと交わり、ゆらぐ。やがて花開くふくよかな余韻には、まごうことなき「福島の酒」らしさを強く感じさせる。繊細さと力強さを併せ持つ奥深さは、飲み手を飽きさせることがない。
この酒の持つ、不思議なほどに透明感ある一口目という個性、終盤にかけてしなやかに伸び広がる「ふくみ」をどう引き立てるべきか。それに相応しい肴を求めて、思考は巡る。飲み手の感性を刺激してくれる。そんな面白さも感じさせてくれる酒だ。
■今月の美酒
・純米酒 萬代芳<福島県会津美里町/白井酒造店>

■勝手にペアリングを考えてみた
福島が誇る地酒の一角、萬代芳。清らかさと芯の強さのコントラストがある酒をどうペアリングしていくべきでしょうか。
今回は、水のように澄んだ口当たり 、そして心に沁み渡る透明感と淡い香り といった繊細なトップノートを大切にしたいと強く感じます 。
そこで真っ先に合わせたくなったのは、湯葉。それも、敢えて刺身ではなく、出汁で味付けた巻湯葉あたり。この酒は、芯がしっかりしているので脂の強い料理と合わせても決して負けることはありませんが 、その不思議な程に透明感ある一口目には、同じく柔らかで繊細な口当たりから、ゆっくりと、しかし確かなコクと旨味を醸し出してくれる和の出汁が良く似合うのです 。
以前のfukunomoの記事に「酒のペアリングには、酒と肴の歩幅、あるいは『速さ』も大事」と書いたことがあります。口に含んだ瞬間に弾けるように広がる酒もあれば、じんわりと心身に染み渡る酒もある。この「萬代芳」は後者であり、その「歩幅」を揃えるには、巻き湯葉の煮付けのような、穏やかな旨味がじっくりと滲み出る肴が最適なパートナーとなります。静かで深い対話の中で互いの個性を高め合うような、素敵なペアリングになること請け合い。
同じ理由から、この酒は上品な味付けの出汁もの、特に薄色で炊いた煮物との相性が絶妙と思われます。たとえば茶碗蒸しなども、この酒が持つ透明感を損なうことなく、その繊細な出汁の旨味を一層引き立ててくれるでしょう。醤油よりも、淡い色の出汁を主役にした煮物。椎茸やタケノコ、ヤーコン、レンコンなど、噛むほどに旨味と食感が楽しめる食材とのペアリングは、この酒の持つ奥深さを余すことなく堪能させてくれるはず。
こうした繊細な透明感という特性を生かす方向で福島の食材を考えると、上品な帆立出汁を生かした会津の郷土料理「こづゆ」が非常に良いかもしれません。キクラゲや他の食材の持つ豊かな食感も、この酒の穏やかな口当たりに心地よいアクセントを加えてくれるに違いありません!
さらに、常磐ものの名物、穴子なども良さそう。京都の鱧が持つ上品な味わいを意識し、たとえば穴子の白焼きに柚子胡椒を添えて「萬代芳」と合わせたら、それはもう、たまらないはず。
他に、素材本来の味わいを活かした滋味深い肴も、この酒の良さを引き立てます。福島市が誇る銘菓「太陽堂のむぎせんべい」は、まさにその好例。香ばしい小麦の香りと、噛みごたえのある素朴な食感は、この酒と合わせることで、互いの持つシンプルながら奥深い味わいを際立たせ、至高の時間を創り出してくれるはずです。
全く別の方向性として、燻製を合わせるという発想も面白いかも知れません。特に、白身魚や川魚、豆などを燻したもの。味の変化とともに、発見に満ちたペアリングが生まれる可能性も。
豆系との相性も良し。枝豆、茹でピーナツなどのフレッシュで素朴な香り立つ豆類は、この酒の透明感を一層際立たせ、夏のペアリングとしてかなり良さげかも。
それでは、今回のfukunomoペアリングに行ってみましょう!
■今月のマリアージュ/ペアリングセット

・麓山高原豚の塩焼豚<福島県郡山市/矢澤ハム>
・にしんの山椒漬け<福島県大沼郡会津美里町/有限会社カネマスクリキ食品>
・会津 ピリカラしそみそ<福島県河沼郡湯川村/マルコウ醸造株式会社>
・山菜しぐれ<福島県大沼郡会津美里町/有限会社カネマスクリキ食品>
・あいづピーナつまみ パルメザン&ブラックペッパー<福島県喜多方市/APJ株式会社>
・麓山高原豚の塩焼豚<福島県郡山市/矢澤ハム>

震災前は浪江町で豚肉料理専門店を営んでいたマスターが立ち上げたハム工房から届いた、渾身の塩チャーシュー。酒蔵さんも「とにかくうまい。脂身とよく合う」と絶賛する逸品です。
口に含むと、麓山高原豚のきめ細やかな肉質と、冷たくてもとろけるような上質な脂の旨味がじゅわりと広がります。この豊かな旨味と脂身のコクが「萬代芳」の澄んだ口当たりと出会うと、酒の「ふくみ」が滲み出る速度、「歩幅」が少し早まるかのような感覚があります。
旨味がじんわり、しかし口当たりは驚くほど軽やかに、奥深い味わいへと昇華され、互いの個性を引き立て合う。まさに理想的なペアリングと言えるかも知れません。美味しい。
・にしんの山椒漬け<福島県大沼郡会津美里町/有限会社カネマスクリキ食品>

蔵元さんが「お酒の為のおつまみ」と断言する、会津の伝統的な郷土料理です。特に、このカネマスクリキ食品のものは身が締まり、噛めば噛むほどににしんの旨味がじっくりと滲み出てくるとのことで、蔵元さん自身、酒の席に毎回必ず持っていくというお気に入りの逸品なのだとか。
「萬代芳」の清らかな口当たりと味わいが、山椒の爽やかな香りとニシンの旨味を優しく包み込み、互いの旨味を一層深く、豊かなものにしてくれます。蔵元さんが言うように、じっくりと噛みしめながら味わいたい一品です。
・会津 ピリカラしそみそ<福島県河沼郡湯川村/マルコウ醸造株式会社>

青じその強い香りと味噌の濃厚な味わいが「萬代芳」の淡い香り、そしてフィニッシュにかけての力強いコクと見事にリンクする、ピリ辛しそみそ。濃密な味噌の旨味が、この酒のふくよかな余韻と重なり共鳴ことで、驚くほど豊かなハーモニーが生まれます。
もし油揚げがあれば、この味噌を塗って軽く炙ることで香ばしい香りと共に、味噌の旨味、しその爽やかな香りが一層「萬代芳」と溶け合い、一口ごとに異なる表情を見せる贅沢なマリアージュを堪能できます。
・山菜しぐれ<福島県大沼郡会津美里町/有限会社カネマスクリキ食品>

香り高い山の幸を丁寧に炊き上げた「山菜しぐれ」は、口に運ぶたび、ふわりと広がる清々しい香りと、優しい甘辛い味わいが心地よい余韻を残してくれます。素朴ながらも滋味深い味わいが「萬代芳」の個性と見事に調和し、至福の時間を創り出します。食感のアクセントも楽しく、酒と共にゆっくりと味わうことができます。
・あいづピーナつまみ パルメザン&ブラックペッパー<福島県喜多方市/APJ株式会社>

豆系の相性が良い!と思っていたところに、これは嬉しい。香ばしいピーナツの風味が心地よい「会津ピーナツつまみ」は、シンプルながらも「萬代芳」の魅力を引き立てる名脇役と言えます。
ピーナツの持つ甘みと香りが、酒と合わせることでさらに鮮やかに立ち上がり、噛むたびに広がる香ばしさ、そして酒の持つ清らかな透明感が絶妙に絡み合い、互いの良さを引き出し合います。食感も楽しく、ついつい手が伸びてしまう、絶妙なペアリングです。
今回もご紹介させて頂いたfukunomo。もし良ければ、みなさまご一緒に楽しみませんか?
fukunomoは美味しい!楽しい!はもちろんのこと、福島県内の酒蔵さんやおつまみの企業さんを応援する、福島に息づいている文化を守っていく一面もあります。ぜひご利用頂ければ幸いです。
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