地元・喜多方の良さがすべて詰まった酒を 大和川酒造店《福島県喜多方市》 - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

地元・喜多方の良さがすべて詰まった酒を 大和川酒造店《福島県喜多方市》

十代目/代表社員 佐藤雅一さん
1980年生まれ。東京でウェブデザイナーとして働いた後、2007年に大和川酒造店に入社。営業や経営に携わり、2022年に専務から代表となった。

専務/杜氏 佐藤哲野さん
1984年生まれ。神奈川の大学で学んだ後、ものづくりをするべく大和川酒造店に入社。2014年より杜氏として酒造りを取り仕切っている。

喜多方の水、喜多方の米、そして喜多方の人―。
〝オール喜多方〞で造る日本酒のことを、大和川酒造店では〝郷酒〞と呼んでいます。
例えば、日本酒に必要な米は、自分たちで作ること。
今でこそ米作りをする酒蔵は増えてきましたが、大和川酒造店が米作りを始めたのは三〇年以上も前のこと。
現在では、六〇町歩(東京ドーム十二個以上の広さ!)もの自社田で、酒米をはじめ、食用のうるち米・そばを栽培しています。

大和川酒造店の酒を飲むことは、喜多方という土地を味わうこと―。
〝郷酒〞への想いは変わることなく、
来年からはなんとエネルギーまで喜多方産になるのだといいます。
ご兄弟で蔵を支えるお二人に、お話を伺いました。

 

米もエネルギーも喜多方産

「山田錦は一度も買ったことがないですね」という雅一さんの言葉には驚かされます。日本を代表する酒米といってもいい「山田錦」は、多くの酒蔵が使用しています。兵庫県での生産がおよそ6割を占め、東北地方では栽培が難しいといわれることも。そんな酒米さえ自社田で育て、その米から生まれた日本酒が、各鑑評会で金賞を受賞しているのです。

米の次は、エネルギーです。東日本大震災を機に、原料だけでなくエネルギーも自立せねばと感じた先代の佐藤彌右衛門さんは、2013年に会津電力を設立。

「エネルギーの自給自足」を掲げてきました。
大和川酒造店でも、来年から〝喜多方産エネルギー〞に切り替える予定だといいます。喜多方の米、喜多方の水、喜多方の人―

ここに、喜多方のエネルギーが加わるのです。

白ワインのような日本酒!?

今月お送りした『弥右衛門 リンゴ酸酵母仕込』は、よく知る日本酒の味わいとは少し違うかもしれません。人によっては、「白ワインのような」と評することもある一本です。杜氏の哲野さんは酸の研究に力を入れており、今回はリンゴ酸を使っています。

「今までにない味わいを造ってみたかったんです。米・水・麹……日本酒の原料はとてもシンプルですが、そのくせ味わいは信じられないほど広がりがあります。まだ表現されていない日本酒の味の可能性がたくさんあるのではないかと感じているんです。もちろん王道の味わいも好きですが、『こんな味の日本酒があるんだ!』と驚かせるような味も追求していきたいですね」

実現したいアイデアがたくさんあるのだという哲野さん。「喜多方の良さがすべて詰まったお酒を造りたい」と語ります。米・水・人、そしてエネルギーまで喜多方産となり、どんなお酒を造ることができるのか―。今からワクワクしているそうです。

地元のみんなで発展していきたい

今後の目標を伺うと、「もっと地元の人に開いた蔵でありたいです」と雅一さん。創業当初の面影を残すかつての蔵は「北方風土館」として一般開放しており日々賑わっていますが、それだけでは不十分とのこと。

そこで10月に開催したのが、「コメとカンパイ」と名付けた蔵開きです。大人も子どもも、お酒が好きな人も飲めない人も、誰もが気軽に立ち寄れる場所でありたい―。そんな想いを込め、日本酒はもちろん、ノンアルコールドリンクにジュース、大和川ファームのお米、会津を中心とした飲食店のフードブースも出店しました。

「酒蔵は、地域のみなさんあってこそ成り立っているものです。歴史ある蔵として、喜多方の文化を体現する責任も感じています。ここ喜多方に住むみんなで発展していくために、できることを模索していきます」

喜多方の魅力が詰まったお酒が気に入ったなら、次はぜひ喜多方へ足を運んでみてください。