多彩な音が響き合うフルオーケストラのような圧倒的ボリューム感。洗練の技は完璧に程近い和音を紡ぎ、奏でる共鳴に濁りは無い。(2024年3月|笹の川酒造) - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

多彩な音が響き合うフルオーケストラのような圧倒的ボリューム感。洗練の技は完璧に程近い和音を紡ぎ、奏でる共鳴に濁りは無い。(2024年3月|笹の川酒造)

今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!

【連載第67回目】

円熟とキレ。ドライで透明感ある口当たりと心地よい酸味を感じさせながら、後味にかなりしっかりとした力強いコクが待っている。伝統的な「郡山の酒」の王道を感じさせる貫禄は、多彩な音が響き合うフルオーケストラのような圧倒的ボリューム感。洗練の技は完璧に程近い和音を紡ぎ、奏でる共鳴に濁りは無い。

その一方、この酒は燗にされることで、もう一つの表情を見せてくれる。口にする度、しっとりと馴染んでくる心地良い口当たり。温もりと安らぎを感じさせるコク。炊き立ての新米にも似た香りと温もり、じんわりとした旨味が広がる。心に深く沁み入ってくる酒だ。

蔵元がある郡山市は福島県内の交通の要であり、東北地方で有数の人口規模を誇る経済都市である。同時に、豊かな自然と調和した二つの表情を持つ美しい街だ。

この酒には、「郡山」という土地が持つ多様性、グラデーションから織り成される味わいを体現したかのような懐の広さ、面白さ、奥行きがある。深く味わえば味わうほど、共鳴し合う余韻が実に美しい。
公的な席にも和みの場にも。安積のせせらぎを想う流觴曲水(りゅうしょうきょくすい)から爾汝(じじょ)の交わりまで、あらゆるシーンを彩ってくれる。

また、郡山市は古くから音楽に纏(まつ)わる 文化が盛んでもある。ときに「楽都(がくと)」と呼ばれることもある。(https://www.city.koriyama.lg.jp/soshiki/45/4273.html)

この地の名と体を表現したかのような──「文化」と呼ぶべき銘酒が、ここにある。

■今月の美酒

・笹の川 純米酒<福島県郡山市/笹の川酒造>

笹の川酒造さんは、近年ウイスキーの蒸留所としても全国に名を馳せている名醸造・蒸留所であります。

醸された日本酒はもちろん単独でも美味しいものの、特筆すべきはペアリングにおける妙技。合わせた肴の風味を引き寄せ調和させる特性。さまざまな肴の香り、風味、旨味、甘味、それぞれを引き寄せ、絵の具のように調合し、まっさらな大きなキャンパスに描き出すかのような楽しみがあります。

勝手にペアリングを考えてみた

この酒なら、かなり強い旨味やクセの強い香りでもしっかりとペアリングしてくれそう。たとえば、以前fukunomoでお届けした「又兵衛 純米酒」(いわき市・四家酒造) などがそうであったように、生カツオなどの本来マイナス要素となる生臭さをトリミングして減らすのではなく、絶対値をそのままにプラスに変換してくれる程の懐の強さがある。

郡山名物で何か合わせようかと思うと、個人的に真っ先に食べたいなと思ったのは郷土料理「キャベツ餅」。なにせ好物なので!
…だけど、これは製品化されている訳ではないのでfukunomoで製品として用意するのは難しいかな。

他にペアリングの観点で郡山名物となると、イチオシは全国の市町村で郡山が生産量1位の鯉を使った「鯉こく」(※ここでは鯉の甘煮のことを指す。地域によって呼び名が異なる)。あの強い味わいはこの酒のペアリングとしてはかなり合いそう。同じ鯉にしてもアライとか他の食べ方じゃなく、この酒の力強さ、特に燗には断然、「鯉こく」が合うとは思う。ただ、コストと商品選定に難があるかもしれないね。鯉は結構な高級品なので。

他に、これは中華とか韓国風とかとの相性が良いと思う。たとえば結構強めのラー油風味とかがアクセントとして面白いかな?と思いつつ、メンマとかはこれまでも結構出ているので、小田原屋の「ラー油きくらげ」などはどうでしょうか。きくらげのコリコリ感とラー油とをこのお酒と合わせると、きっと面白いペアリングになるんじゃないかなと思えます。国産きくらげはここ10年くらいで盛んになったものだし、これは食べてみたい。

さらに郡山名物で考えると、これも以前美味しかった、いとうフーズの「福島牛コンビーフ」あたりを再び出してみるのも良いかもしれない。馬の焼肉や鍋とかも合うとは思う。この酒の力強さを考えると、クセの強いホルモンとかでもイケてしまうので。たとえば、もつ鍋なんかを合わせて、この酒の燗酒を合わせるとかも美味しそう。あるいは、辛味噌焼きあたりで香ばしくカリっと焼き上げたホルモンを合わせるとか。

本当は郡山のブランド野菜を出したいところながら、3月だと野菜は難しそうかな。

甘味は、三万石の「ままどおる」とか、「エキソンパイ」とか、あるいは長登屋の「酪王カフェオレクランチ」とか?

この酒には燻製も合いそう。具材は魚とか、アンキモとかでも良いかも。
白河のこまやの「さきいかキムチ」とかとの相性も良さそう。さらにいえば、チャンジャくらいに生臭くても大丈夫。

他には、エスニック的な酸味とかもアクセントにいいと思う。トムヤンクンとかレモングラス的な風味も良さそうだけど、流石に福島関係なくなってしまうかな。ただ、ぶっちゃけこの酒、ベトナム料理やタイ料理とかとの相性も良いと思うよ。パクチーと合わせても負けないし。その意味では、レモンとかライムの酸味を入れてあげるのは良いと思う。

笹の川さんはウイスキーでも有名だし(「963」、結構飲んでるのでお世話になってます)、ブランド力が強いと思う。というか、ウイスキーに合わせても良い肴との相性良さそう。チョコレート系とか、ナッツ系とか。その発想で、郡山の「まめや」さんの豆を使うのはかなりアリかな。

それでは、いよいよfukunomoとのペアリングにいってみましょう!

■今月のマリアージュ/ペアリングセット

・鯉の甘露煮
 <福島県郡山市/廣瀬養鯉場>

・うつくしまエゴマ豚 生姜焼
 <福島県郡山市/鈴畜中央ミート>

・福島県産 しいたけ
 <福島県会津若松市/JA会津よつば>

・べったら漬
 <福島県郡山市/小田原屋>

・家伝くるみゆべし
 <福島県郡山市/かんのや>

・鯉の甘露煮 <福島県郡山市/廣瀬養鯉場>

ドンピシャできました!鯉。これお高いものなのに大丈夫なんでしょうか??
そしてやはり、甘く煮詰めた旨味がお酒に染み出すと、これが本当に絶妙!ですね。まさに甘煮とかいて「うまに」と呼ぶ感じ。(甘露煮だけどね。)

つくづく、このお酒、合わせた肴の風味を引き寄せ描き出すことに本当に長けていると思う。特に燗にするとこのペアリングが絶妙に合うね。

・うつくしまエゴマ豚 生姜焼 <福島県郡山市/鈴畜中央ミート>

続いては、「うつくしまエゴマ豚 生姜焼」。小麦色に炙った良質の豚肉に生姜の香ばしさが絡んで、実においしい一品です。

言うまでもなく、これもお酒との相性が絶品。鯉の甘露煮とはまた違う味付けと薄切り肉ならではの軽やかな食感が、また別のアプローチを届けてくれます。
このお酒は基本的に「白米に合う」ものには絶大な相性を誇るので、あったかいうちにハフハフさせながらお酒と合わせてください。おいしいよ??

・福島県産 しいたけ <福島県会津若松市/JA会津よつば>

蔵元おすすめの食べ方は、「ひっくり返してトースターで傘の中に水が出るまで炙って、塩なしでそのまま…」とのこと。トースターの代わりに、魚焼きグリルで言われた通りにじっくりと炙ってみた。

最初は、いや、せめて醤油なり塩なりがあった方が良いのでは…?と思いつつも、まずはおすすめに従ってみる。

すると、少し乾いたしいたけの濃縮された強い香りがお酒に沁み入って、驚くほどに美味しくなる。しいたけの香りが、松茸に劣らないほどに強くなる。さらに、それを受け止められる笹の川の力強さによって、口の中で土瓶蒸しのように完成する。

…なるほど。これは、もはや醤油はおろか塩さえも要らない。椎茸の香味、出汁が、酒の中に強烈に溶け込んでくる。他の味ではなく、この香りを最大限に引き出す。

──ああ、懐かしい。実は私の亡き祖父は、かつて原木から椎茸を栽培していて、こういうとびきり強烈な香りのする極めて上等な椎茸を作っていたのでした。子どもにとって困惑するほど香りが強すぎたが、何度も表彰されたことがある椎茸だった。
こんなに強い香りがする椎茸を味わえたのは久しぶり。なるほど、こうやって食べれば良かったのか。こうすれば、あの頃に食べたような椎茸の香りが再現できたのかと。

お酒とのペアリングはもちろんのこと、この懐かしい味わいを教えてくださった蔵元には心からの感謝しかありません。これから、椎茸の消費が一気に捗りそう。

・べったら漬 <福島県郡山市/小田原屋> 

お馴染みになってきた、小田原屋さんのべったら漬け。甘すぎず、自然の優しい風味とうまみを感じさせてくれる一方、箸休めとしても秀逸な一品。

なかなかに癖になるおいしさで、特に生姜焼きとお酒と一緒に口にすると肉汁のジューシーさがさらに引き立つ感覚。特に郡山の名産品であるところもいいですね!

・家伝くるみゆべし <福島県郡山市/かんのや>

最後の〆は三春銘菓として生まれ、今や県内全域で愛され続けている「かんのや」のゆべしから、今回はくるみゆべしです。

「かんのや」さんのゆべしでまず特筆すべきは、しっとりとした餅の食感。これが柔らかな甘味香りと織り成すハーモニー。更に胡桃の脂が持つ甘味と僅かな苦味、食感がアクセントとして秀逸です。

お酒と共に味わうと、これらのハーモニーを素晴らしい音響のホールで演奏したかのように、佳き音が一層引き立ちます。冷やには冷や、燗には燗のハーモニーを楽しめる。これは味わい深いなあ。

今月も、ご馳走様でした!


今回もご紹介させて頂いたfukunomo。もし良ければ、みなさまご一緒に楽しみませんか?
fukunomoは美味しい!楽しい!はもちろんのこと、新型コロナウイルスでの影響から立ち直ろうとする福島県内の酒蔵さんやおつまみの企業さんを応援する一面もあります。ぜひご利用頂ければ幸いです。

この記事を読んでfukunomoを試してみたいと思った方は、下にある特別リンクからfukunomoスタンダードコース、またはプレミアムコースにお申し込みいただくと、特別なおまけも付いてきます♪

申込期限2024年3月15日(金)まで