強めの酸味と、原料に使われた酒米・美山錦らしさを感じる清々しいキレ。それはまるで、阿多多羅山の山の上に毎日出てゐる青い空。(2023年10月|株式会社檜物屋酒造店) - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

強めの酸味と、原料に使われた酒米・美山錦らしさを感じる清々しいキレ。それはまるで、阿多多羅山の山の上に毎日出てゐる青い空。(2023年10月|株式会社檜物屋酒造店)

今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!

【連載第62回目】

あれが阿多多羅山(あだたらやま)、あの光るのが阿武隈川(あぶくまがわ)。
ここはあなたの生まれたふるさと。
あの白壁の点々があなたの家の酒庫(さかぐら)。(高村光太郎・『智恵子抄』樹下の二人より)

智恵子抄は詩人・高村光太郎が、洋画家であり亡き妻の智恵子と過ごした日々を回想し紡いだ言葉。病に侵された智恵子は度々、郷里である安達(現在の二本松市)で静養していたという。

この酒の銘「甑峯(こしきみね)」とは、光太郎が妻と仰いだ阿多多羅山(現在の安達太良山)の古い名前を指す。
強めの酸味と、原料に使われた酒米・美山錦らしさを感じる清々しいキレ。それはまるで、阿多多羅山の山の上に毎日出てゐる青い空。気持ちを解(ほぐ)していく、あまりに柔らかであどけない、静かに揺蕩(たゆた)う旨味。

これが『甑峯』。阿多多羅山の名にしおう酒。
この地に、人々に愛された、ふるさとの味。

智恵子の生家は、檜物屋酒造店と同じ旧二本松藩領の造り酒屋であった。
かつて酒蔵が何棟も並び使用人を大勢抱えていたが、大正末期に破産して人手に渡った。(現在は二本松市が保存し、裏庭には記念館も建てられている。)1 記事末尾参照。

詩人が寄せた、亡き妻への切なくも深い愛。
二人の「後ろに出来た道」、その道程に想いを馳せつつ、
阿多多羅の麓(ふもと)で造られた酒を味わってみるのも悪くはない。

■今月の美酒

・千功成 特別純米酒 甑峯(こしきみね) <福島県二本松市/株式会社檜物屋酒造店>

鮮烈な香りとキレのある味わいがくせになる一本。
印象強くも端正なバランスが心憎くも粋です。
濃いお料理に合わせると口の中をさっぱりさせてくれます。

今回の『千功成 特別純米酒 甑峯』を醸す檜物屋酒造店さんは、二本松市の酒蔵。
奥の松、大七、人気一など世界中の日本酒ファンにとって垂涎の酒蔵が全てひしめく、日本酒の世界的名醸造地とさえ言える地で地元から深く愛され、そのほとんどが地元で飲みつくされてしまうという『本気で旨い』地酒。贈答品にも非常に喜ばれるので、私も二本松に行くたび自分用とお土産用にそれぞれ買っています。

Q.このお酒がまるで当たり前のように届いてしまうのは、何かのバグなのでしょうか?
A.いいえ、fukunomoだからです。(すばらしい)

今回の『千功成 特別純米酒 甑峯』は、一口目にはややらしからぬ現代風のややスッキリした口当たりや酸味がかなり強めに出ます。一方で、中盤から後味にかけては日本酒の王道とも言える芳醇な旨味が、味わうほどにじわじわ出てくる。そうそう、この沁み入るようなふくよかさこそ「二本松の酒」という感覚で、この蔵の酒は、特にこの魅力が強く出やすいお酒が多い印象。根強いファンが多い理由の一つですね。

全体的には伝統の良さを生かしながらも、よりスッキリと万人向けに飲みやすくしたような感じ。オールマイティに使えるものの、個人的には特に食前、食後酒というよりも秀逸な食中酒として推したい。

勝手にペアリングを考えてみた

というわけで、今回もまず最初は勝手にペアリングを試してみた。

ところが事前にいくつか色んなおつまみを実食して合わせてみたところ、ちょっと困ったことに。どの肴も上手に引き立て過ぎてしまうので、「どれが合うかな」なんて考えてるうちにボトルの中身がどんどん減っていく。合わせるたび、試すたびに、酒があまりにも自然に、溶けるように消えていく。酒があまりにも「おかずの一品」として。大体のものをあまりにもそつなく合わせてしまう。
これ、もはや「最高の白米」だ!

そうした中で敢えて、酒と肴の存在感を引き立てることに特化すると「強めの和の旨味」に合わせるのが恐らくベストかな? と思える。醤油、照り焼き、味噌、みりん。これらの主張が強めの肴との相性が良いのではないかな。奇をてらわない伝統的な和が特に良い。

たとえばみりんの強い旨味と風味は、この酒と合いつつ「ペアリングの存在感」を強調してくれそうなので、さんまのみりん干しなんかも良さそう。代替としてイワシも有り。鯖も悪くはないが、独特の強すぎる匂いが少し邪魔する可能性もあるので、イワシの方がベター。

あとは玉蒟蒻なんかも良さそう。たまり醤油の強い旨味が、酒と肴の存在感をかなり引き立てること間違いなし。季節感としても秋らしくて良いかも。
みりんや醤油などを使った煮物。煮魚や肉じゃがとかも合うと思う。

他に焼鳥は実食してみたけど、これはかなり合った。特に塩とタレならタレ一択。このお酒には照り焼き風味も良く似合う。

箸休めとしては、煮豆や枝豆などとの素材感ある豆。他に、口当たりの酸味の強さとリンクさせる形で酢の物がアクセントにもなって良いのかも知れない。あおさとか、タコの酢の物とか美味しそう。

甘味との合わせは、甘すぎない餡子あたりが良いかもしれない。ここは地元二本松で、檜物屋酒造店さんから徒歩でいけるご近所さんでもある玉嶋屋さんの『木の葉饅頭』を強めに推したい。この酒には、ほろほろ食感と素朴な味わいの餡子が合わせやすいと思う。

それでは、いよいよfukunomoペアリングの実食にまいりましょう!

■今月のマリアージュ/ペアリングセット

・いわき発祥 さんまみりん干し
 <福島県いわき市/株式会社大川魚店>

・うつくしまエゴマ豚ハム チーズ&くるみ
 <福島県福島市/福島県流通ネットワーク協同組合>

・福島りょうぜん漬 とうちゃん漬
 <福島県福島市/福島りょうぜん漬本舗>

・四季の味覚 ゆず千枚
 <福島県伊達市/有限会社八島食品>

・木の葉饅頭
 <福島県二本松市/株式会社玉嶋屋>

・いわき発祥 さんまみりん干し <福島県いわき市/株式会社大川魚店>

今回届いたのは、いわき市の老舗魚店である「大川魚店」より、いわき市発祥と言われる『さんまみりん干し』。出来るだけ脂が乗った秋刀魚を選び、旨味たっぷりのみりんで仕込んだ銘品です。

来ましたね、コレ!ドンピシャでさんまみりん干し。しかも最近、非常に人気を集めている常磐もの。今年はいわき市へのふるさと納税が急増し、返礼品も海産物が一番人気なのだとか。

炙ることで香ばしさと甘味、旨味、脂がじゅわじゅわじゅわ…っと滲み出てくる。
そこでお酒を一緒に口にすると、濃縮されたそれらの味わいが水を得た魚のように一気に跳ねる躍る!まるで、俄に秋刀魚が息を吹き返したかのよう。

それにしても、この「みりん干し」という加工技術は、つくづく魚の旨味をものすごく引き出しますね。生魚では味わえない、驚くべき洗練がある。特に日本酒と合わせると際立つ。
正直、この加工技術とその魅力は世界的にはあまり知られているように思えるので、和食ブームに合わせてもっと普及させても良いのでは?と思えてきます。

・うつくしまエゴマ豚ハム チーズ&くるみ <福島県福島市/福島県流通ネットワーク協同組合>

続いては、『うつくしまエゴマ豚ハム チーズ&くるみ』。
しっかり冷やした状態でそのまま口の中に運ぶと、温度の変化で豚の旨味とチーズがとろとろと蕩けはじめます。反面、味わいは輪郭がしっかりしていてくるみの食感も実に良いアクセントに。
これらを『千功成 特別純米酒 甑峯』と合わせると、旨味に加えてくナッツ特有の自然な香りと甘味がかなり強調されますね。お酒の風味を彩ってくれます。

・福島りょうぜん漬 とうちゃん漬 <福島県福島市/福島りょうぜん漬本舗>

・四季の味覚 ゆず千枚 <福島県伊達市/有限会社八島食品>

続いては、いずれも福島の県北からお漬物の組み合わせ。
ふくしまりょうぜん漬本舗は贈答品の定番としても有名ですが、今回のとうちゃん漬は特に人気の一品。蔵元も好きで良くお召し上がりになるのだとか。ええ、私も大好きです!
特に『とうちゃん漬』はにんにくの風味も効いているので、おつまみとしてもピッタリ。『千功成 特別純米酒 甑峯』は芯が強い酒でもあるので、風味も塩気も非常に美味しく味わえます。さすが「最高の白米」。お酒もつまみも止まりません!

そしてもう一つの漬物は、fukunomoですっかりおなじみの伊達市八島食品から『ゆず千枚』

柚子の爽やかな甘酸っぱさと香り、ほろ苦さ。そして千枚漬ならではの少しねっとりとした食感が絡み合って、コクがありながらも他のペアリングを引き立てる箸休めとして非常に秀逸。この柚子の香りと苦味は、『千功成 特別純米酒 甑峯』と合わせて本当に絶妙ですね。

・木の葉饅頭 <福島県二本松市/株式会社玉嶋屋>

最後は、まさに「これが来たら良いな」と願った玉嶋屋の『木の葉饅頭』!
玉嶋屋さんと言えば『玉羊羹』が有名ですが、こちらは地元で根強い人気を誇る銘品。
これ実は好物なんですよ。江戸時代と変わらぬ楢薪の焚き上げで作った餡子を少し甘さ控えめでホロホロの状態にしたものを、少し照りのある皮で包んだ饅頭。口の中でほぐれるエアリーな食感と僅かな塩気と優しい甘味の組み合わせが非常に癖になります。

『千功成 特別純米酒 甑峯』と合わせると、甘味と塩気、食感からして「甘味」という以上に「肴」感があって実に美味しい。ご近所同士、酒も甘味も「秘蔵っ子」的に地元で愛されている逸品同士の組み合わせ。こういうのが楽しめるのも、まさにfukunomoの醍醐味ですね。

今月も、ご馳走様でした!


今回もご紹介させて頂いたfukunomo。もし良ければ、みなさまご一緒に楽しみませんか?

fukunomoは美味しい!楽しい!はもちろんのこと、新型コロナウイルスでの影響から立ち直ろうとする福島県内の酒蔵さんやおつまみの企業さんを応援する一面もあります。ぜひご利用頂ければ幸いです。

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申込期限2023年10月15日(日)まで

ぜひこの機会にお申込みください。お待ちしています。(*´▽`*)

  1. 【参考リンク】
    二本松商工会議所「二本松藩丹羽家」
    ・福島県男女共生センター「高村智恵子 ー光太郎との愛を貫き、共に美の探究に生きた女性ー」

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