多彩な風味が重なることで織り成されるイメージは、まるで大ホールに響くフルオーケストラのよう。(2022年12月|仁井田本家) - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

多彩な風味が重なることで織り成されるイメージは、まるで大ホールに響くフルオーケストラのよう。(2022年12月|仁井田本家)

今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!

【連載第52回目】

めくるめく華やかさ。鮮烈な酸味。そして、キメ細やかな微炭酸の小気味良い口当たり。
続いて広がるのは躍動感溢れた力強い旨味、熟した果実を思わせる濃厚なコク、自然由来の柔らかく繊細な甘味。

優美でありながら凛々しく、円熟でありながら清爽。
多彩な風味が重なることで織り成されるイメージは、まるで大ホールに響くフルオーケストラのよう。
魂を揺さぶるダイナミックな重低音、そして心震わせる透明感溢れた気高き高音。
管、弦、打、それぞれの楽器を思わせる個性が交じり織りなす重層的な旋律は、まさに美しい協演であり、饗宴──。

■今月の美酒

・にいだしぜんしゅ しぼり直汲み純米生 <福島県郡山市/仁井田本家>

今年最後のfukunomoを締めくくるお酒は、郡山市の仁井田本家より「にいだしぜんしゅ しぼり 直汲み純米生」です。

仁井田本家は福島の中でも特に歴史ある蔵元で、創業から300年以上という伝統を誇ります。同蔵が近年、特に力を入れているのが「自然の恵みを最大限に引き出す」こと。お米は化学肥料や農薬を全く使わない自然米のみを使用し、水も全て自家天然水です。

また、仁井田本家こだわりの製法にも自然の恵みがふんだんに生かされています。1つは「しぜんしゅ」シリーズに採用されている生酛(きもと)造り。自然由来の乳酸菌を生かした昔ながら醸造法です。
もう1つは「おだやか」シリーズに見られる、白麹(しろこうじ)を使い独特の香味を纏わせた製法。
今回のお酒は生酛造りの「しぜんしゅ」。発酵には自家製の蔵付き酵母を使用しています。

生酛造りは、すでに述べたように自然の恵みを最大限に生かした伝統的な発酵技術。力強く重厚、ダイナミックで奥深い、日本酒の伝統的味わいが醸しやすくなります。一方で非常に手間がかかるため、今もやっている蔵は本当に少ない。苦労の末に造られている1本と言えるでしょう。
さらに今回のお酒で更に特筆すべきは、精米歩合を敢えて抑えた(お米をあまり削らず、素材が持つ力と風味がふんだんに残されている)ことで、生酛ならではの複雑さと重厚さがさらに生かされている点と言えるでしょうか。

ご存知の様に、お酒の原料となる米(特に外側部分)には酒の味としては敬遠されがちな「雑味」の原因となる成分も多々含まれるため、これらを削るのが一般的です。多く削るほど「吟醸」「大吟醸」などのお酒になってきます。
その精米歩合を抑えるというのは、本来は削られてしまう「雑味」をも包括することを意味します。一歩間違えればお酒の味を損ないかねない多様な味わいを制御し、バランスを整えて「旨い酒」に仕上げるのは至難の技。オーケストラでたとえるなら、同時に演奏する演者や楽器が増えるほど音やタイミングを合わせ難くなることにも似ているかも知れません。

ところが、結論を言いましょう。「実に旨い」のです。このお酒は、本当に旨い。そして面白い。
生酛造りと相まって、この酒には多彩な味わいがひしめき、響き合っています。複雑さと重厚さを内包していながら、そのフレッシュな口当たりと上品な甘味によって「雑味」は目立たなくなり、代わりに米本来が持つ「旨味」が際立つ。「美味しい」という以上に、文字通り「旨い」のです。さらに、微炭酸の口当たりが華やかさまで演出します。
まるで仁井田本家という名指揮者の技によって、自然が奏でる音の重なりがオーケストラ演奏にまで洗練されたかのよう。実にお見事です!

この、実に旨くて面白い酒がペアリングで見せるであろう表情を想像すると、今からワクワクしてしまいますね!

なお前回もご好評頂いたので、最初に、自分なりにこのお酒に合わせるペアリングのポイントを考えてみましょう。

まず、鮮やかな酸味は他の酸味と合わせても面白いのでは。たとえば柴漬けみたいな酸味や香りともマッチするかも。酢の物と合わせるのも良い。
さらに、熟成した味わいとも良さそう。具体的にはチーズ、とりわけナッティな匂いを出すもの(好き嫌いが分かれにくいもの)を合わせても良いかも。または糀系など。そういう中では、お肉の塩麴漬けなんかも良いね。
あと、和のペアリングも悪くないけど洋風の食材とのペアリングが特に面白そう。そういう意味でも、特に肉や脂の旨味なんかも相性良いんじゃないかな。

柚子やオレンジ、ライムなど柑橘系の香味や苦味を入れるとポイント高め。少し「苦味」を入れてあげると良いアクセントになると思われたり。
ただし、山菜系ではなく柑橘系の苦味でいくべき。あんまり濃口醤油をじっくり煮詰めたような重めの味とは相性良く無さそうなイメージ。醤油系を使うなら、出汁の香りを活かした薄口醤油かな。とにかく華やかさを感じさせるイメージでいった方がいいと思う。(柴漬けの場合、「しょっぱさ」よりも香りと酸味が先立つからOK)

……という感じでしょうか。

それでは、いよいよ今月のfukunomoペアリングを実食で試していきましょう!

■今月のマリアージュ/ペアリングセット

・麓山高原豚の塩焼豚
 <福島県郡山市/矢澤ハム>

・肉じゃが
 <福島県いわき市/小泉食品>

・叶や豆冨の油あげ
 <福島県東白川郡棚倉町/大椙食品>

・四季の味覚 ゆず千枚
 <福島県伊達市/八島食品>

・会津産落花生 塩茹でうまピー
 <福島県喜多方市/おくや>

・麓山高原豚の塩焼豚 <福島県郡山市/矢澤ハム>

最初に楽しむのは、麓山高原豚の塩焼豚。

来ました!旨味たっぷり豚肉の塩味付け。イメージしていた理想に近い肴ですね。

軽く炙ってみると、肉汁が滴りはじめて見るからにジューシーになっていきます。食感といい、旨味といい、なんだか仙台で食べた牛タン炙りを思い起こさせます。豚肉だけどね。

これをペアリングとして合わせてみると、お酒に炙られた脂が触れた瞬間、ジュワっとした小さな音と共に豊かな香りが立ちのぼります! おおっ?? と思わせるくらい、ハッキリとペアリングの効果を感じる。これは良いですねぇ。

これがまた、酒とお肉双方の華やかさと香り、甘味が濃縮されたかのようで、その強烈な旨味に思わず唸ってしまう。旨いなあ。

・肉じゃが <福島県いわき市/小泉食品>

続いては、いわき市の小泉食品からの肉じゃが。「肉じゃが」は、まさに和の王道とも言えるペアリングですね。福島の肉じゃがは、ご家庭によって豚を使ったり牛を使ったり。今回は、牛肉仕立てです。焼豚で豚肉を充分楽しんだところに今度は牛肉とは、ちょっとだけ贅沢気分かも?

醤油仕立ての味わい、今回のお酒にはどうかな? と最初は少しだけ心配したんですが、素材本来の風味と香りを生かした比較的アッサリとした味付けだったので、全然問題ありませんでした。

むしろ、なんでしょうかこの安心感は。ほっこりとした気持ちにさせる温かく優しい味わいは、寒い夜の晩酌に心地良い。ペアリングで得られるインパクト自体は決して大きくはないものの、「そうそう、こういうのが良いんだよ」と感じさせてくれる、落ち着いた味わいがあります。特に冬のペアリングとして、これはアリだなあ。

・叶や豆冨の油あげ <福島県東白川郡棚倉町/大椙食品>

今度は、棚倉町の大椙食品から自慢の油揚げ。素材の良さが生かされた、風味豊かな渾身の一品です。

蔵元のお薦めに従い、これも弱火でじっくりと炙ります。

油を引かずにフライパンにのせて、焼き目がまんべんなく付いたら白出汁を少しかけ、仕上げにとろけるチーズもかけてみました。

これをお酒と合わせてみると、カリふわで心地良い油揚げの風味に、とろーりチーズの口当たりと旨味、香りがプラス。そしてこれまた香りの立つ白出汁が交じり合う。

そこに「しぜんしゅ」を加えてあげると、それらがまとめて溶け込んだジューシー味わいが口の中に溢れます! なかなかに絶妙なペアリングでした。

・四季の味覚 ゆず千枚 <福島県伊達市/八島食品>

ここで箸休めに出てくるのが、「ゆず千枚」。

実に良いですね! さっきも書いたように、この酒には柚子などの柑橘類が欲しいと思っていたところでした。

ペアリングでお酒に柚子の豊かな風味とほのかな苦味、そして酸味が加わる。その一方で、ゆず千枚のやわらかな口当たりはダイナミックな味わいのお酒を優しく受け止めてくれて、見事に調和させる。

これも美味しい! しかも、結構量があるから沢山食べられて満足感も高い。まさに、このお酒に合わせる理想的なおつまみの一つと言えるでしょう。

・会津産落花生 塩茹でうまピー <福島県喜多方市/おくや>

最後は、喜多方市からおくやの塩茹でうまピー。地元会津産の落花生を茹でたてのまま、レトルトパウチにした一品です。

一般的には乾物で食べる機会が多い落花生ですが、大粒で質の高い茹で落花生は「別格」と言える旨さ。確かに風味は「ピーナッツ」のそれなのですが、噛みしめるほどに味わい深いしっとりとした口当たりは、枝豆とも花豆とも違う良質の豆そのもの。

乾物では決して味わえないフレッシュ感が「しぜんしゅ」のフレッシュさと見事にマッチし、驚く程に深いナッティな風味(ナッツですから当然ですけど)を溶け込ませてくれます。

ナッティな風味のチーズが合うかもとは思ったけれど、ここまでダイレクトにナッツ風味を感じさせてくれるおつまみがくるとは思いませんでした。流石はfukunomo!


今回の仁井田本家「にいだしぜんしゅ しぼり 直汲み純米生」は華やかで重厚、複雑な風味でありながらフレッシュ。しかもペアリングに合わせて楽しいという、まさに「饗宴」と呼ぶべき美酒でした。年末の締めを飾るに相応しい最高のパートナーと言えるでしょう。

そういえば、私はこのお酒を最初に「フルオーケストラのよう」とも評しましたが、年末にこの1本を楽しむことは、いわば「ベートーヴェンの第九を声楽隊付きのオーケストラで楽しむような趣がある」とさえ言えるかも知れません。

みなさま、ぜひ、この1本で佳き年末をお過ごしください!

今月も、ご馳走様でした! (*´▽`*)ノシ

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