瑞々しさの中にも感じさせる、際立つコクと円熟感(2022年2月|四家酒造店) - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

瑞々しさの中にも感じさせる、際立つコクと円熟感(2022年2月|四家酒造店)

今月のお酒は「又兵衛 原酒

今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!

2022年2月号は、地元で絶大な信頼を得ているいわき市の四家酒造店さんからお届けする「又兵衛 原酒」です。

【連載第42回目】

寒い日が続きますね!

今シーズンの福島は久しぶりに、ずいぶん雪が降る冬になりました。もう8年近くも雪が少ない冬ばかりだったので、久々の雪かき三昧をエンジョイ()しています!(こしいたい)

さて、今日のお酒は福島県最大の港町、いわき市から。かの名俳優、三國連太郎さん(故人)がかつて「釣りバカ日誌」ロケのときにいわきで出逢い、その後生涯にわたって愛してくださった四家酒造店さんのお酒です。

四家さんのお酒は、その出荷量の9割以上が実は福島県内どころかいわき市内だけで消費されてしまっているのだとか! まさに「地酒」と呼ぶに相応しい一本です。

■今月の美酒

又兵衛 原酒<福島県いわき市|四家酒造店>

四家酒造店さんの主力ブランドは「又兵衛」

実は「又兵衛」の味わいは、他の福島県内地域の酒とは設計がかなり異なります。

一言で言えば、「瑞々しさの中にも感じさせる、際立つコクと円熟感」と表現すべきでしょうか。しっかりとした飲みごたえと芯の強さがかなり感じられるのです。

キラキラとした絢爛な香りとふくよかな旨味。それから程なくやってくる、五臓六腑に沁みるような芳醇で深いコク。実にダンディさが漂う大人の酒です。

一方で、その個性は場合によっては「少し重い」「野暮ったい」「古風」とさえ感じられるもの。万人向けに飲みやすいというよりも、どちらかと言えばやや好みが分かれやすい印象もあります。

なぜ、こういう設計なのか?

その秘密は、この酒の産地と「ペアリング」にこそ隠されているのです!

「又兵衛」は、先にお話ししたように福島県最大の港町、いわきの酒。

この地域は「常磐もの」と呼ばれる魚介類の宝庫で、美味しい地魚が目白押し。ヒラメやタイ、カレイにホウボウなどの白身魚からアンコウやメヒカリといった個性派の名産品、さらに非常に質の良いアナゴのみならず、鰹、秋刀魚、鯖など青魚の水揚げ量も日本屈指に多い地域でもあったのです。秋刀魚をはじめとした青魚の味醂干しは、実はこの地域が発祥との説もあるのだとか。

ただ、魚介類には強い旨味がある一方で特有のクセや匂いも強いのはご存知の通り。特にこの辺りで大量に食べられてきた青魚や魚卵などは、合わせるお酒を間違えると(たとえばワインの一部など)、悪夢のような錆び味と生臭さに襲われてしまいます。

そのため、魚介類とのペアリングはキレの強い「辛口」の酒でトリミングして整える組み合わせが一般的かつ王道と言えるでしょう。こうすることで余計な雑味が消え、綺麗に洗練された旨味のみをしっかりと堪能できます。

ところが、又兵衛のペアリングは一味違います。

又兵衛にかかれば強いクセや匂いといった個性は、そのまま強い旨味と風味に変わってしまうのです。その真髄は、クセの強い肴を「切る」のではなく「懐柔する」。本来はマイナスになりがちなクセやニオイという「敵」を手懐け、「旨味」という味方へと塗り替えてしまうとさえ言えるでしょう

それは、いわば「引き算ではなく、足し算のペアリング」。欠けたパズルのピースがピタリとハマるような心地良さ。バラバラだった一つひとつの演奏がピタリと合わさったフルオーケストラに変貌したかのような迫力。この酒だからこそ成し得た夢の饗宴が、欠けること無くキャストが揃っているからこそ実現したハーモニーが、口の中に、頭の中に、ダイナミックに響きます。ああ、なんて旨い酒と肴なんだ…!と圧倒されること請け合い。この酒を単品で飲んだときとは、大きく印象が変わることでしょう。

「単独ではなく、ペアリングでこそ本物の魅力が最大限に発揮される」という理想の食中酒の魅力が、この酒には詰まっています。恐らく、三國連太郎さんもこの魅力の虜になったのではないでしょうか。

今回は、その中でも特に濃厚な「又兵衛 原酒」です。早速、ペアリングも楽しんでいきましょう!

今月のマリアージュ/ペアリングセットは


  • 福島牛のコンビーフ<福島県郡山市/いとうフーズ>
  • 大玉トマト<福島県いわき市/ワンダーファーム>
  • ソフトくんせいたまご<福島県いわき市/あぶくま鶏卵>
  • 長久保のしそ巻<福島県いわき市/長久保食品>
  • さきいかキムチ <福島県白河市/こまや>

福島牛のコンビーフ
・大玉トマト

さて、まずはコンビーフから。肴のクセの強さを旨味へと懐柔してしまう又兵衛は、こうした加工肉やスナギモ、レバーなどにもかなりの相性を誇ります。

…とはいえ。それにしても、このコンビーフ。前情報無しで食べてみたら、やたらと旨い。えっ。何この旨味と口の中で「ほぐれる」食感。生涯食べたコンビーフの中で一番旨いかも知れない…!

それもそのはず。このコンビーフ、ブランド牛である「福島牛」を使って、手ほぐしで加工している一品とのこと。そもそも、コンビーフに、あの最高級の福島牛を?手ほぐしで??あたまおかしい。(褒めてます)

しかも加工元のいとうフーズさんは福島牛取り扱いのエキスパートで、加工肉製品がドイツなど本場の国際コンクールで金賞まで獲得しているのだとか。まさに、「究極のコンビーフ」と言えるほどに芳醇な味わいでした。

そんな「究極のコンビーフ」に又兵衛を合わせてあげると、牛脂や牛肉の匂いといった「さほど嫌とは感じられない匂いとクセ」までもが、律儀にも「強烈な風味と旨味」へと変換されてしまうのです。福島牛の強烈な旨味に、さらに旨味が追加。なんでしょう、この又兵衛の、もはや「人たらし」とさえ言えてしまうペアリングに対する懐の広さとコミュ力。素材の良さを酒がさらに引き立てて、否応なく魅力の「再発見」をさせてくれます。

その芳醇なペアリングに更に合わせるべきが、ワンダーファームからの大玉トマトフレッシュなトマトに丸ごとかぶりつくと、銘柄黒毛和牛の芳醇な旨味にトマトのフレッシュな酸味と旨味がソースのように絡み合い、旨味をさらにジューシーにしてくれます。これはもはや、最上級の贅沢ハンバーガーにかぶりついたときのソレ。おいしいトマトを肉料理やチーズに合わせると、爽やかさと酸味が追加されて絶品ですよね

それにしても、こんなにコンビーフを美味しいと思えたのは生まれて初めてでした。一見普通に見える肴の一つひとつに、予想外に高いクオリティをねじ込んで驚かせてくるfukunomo。やたらと品質に生真面目ながらアピールが下手な福島「らしさ」を感じさせます。実際に福島の食って、「地味」に見えるさりげなさの中にビックリするようなクオリティが仕込まれていることが多々あるんですよ。

・ソフトくんせいたまご

次は、あぶくま鶏卵のソフトくんせいたまご。燻製と言ってもハードボイルドな卵ではなく、中の黄身はトロットロのライトスモークたまごです。ジューシー。

お酒自体は「ハードボイルド」な風味ながらも、それでもペアリングに合わせるとこうした「生」の強い風味を最大限に活かしてくれるのが又兵衛の魅力。半熟タマゴの旨味や風味も、ペアリングで魅力が引き出されてしまいます。本当に、この「又兵衛」はペアリングの教科書に載せて頂きたいくらいに「ペアリングで豹変する酒」なんですよね。

まさにfukunomoの醍醐味とさえ言える魅力です。

長久保のしそ巻

続いては、お土産人気が高い「長久保のしそ巻」。昭和9年創業のいわき名物であると共に、市民にとっては日常からのソウルフードです。私が子供の頃に住んでいたいわき市好間町内にお店があったりする「元・ご近所さん」でもあって、あまりにも身近な存在でした。

長久保さんの中でもこの「しそ巻」は看板商品。ハリハリ、シャキシャキのダイコンの食感と特有の甘じょっぱさ。強すぎず、しかし絶妙に香るシソの風味がクセになる一品です。

私も全国で色んなお漬物を食べてきましたが、この「しそ巻」の味わいは他にあまり見かけない、特有の個性と言えるかも知れません。

大学時代に関東で暮らしていた際も、宴会のときにこの「長久保のしそ巻」をさりげなく出すたび「この漬物、めちゃくちゃ旨いんだけど、どこで買ったの??」と言われてふるさと自慢が出来たものでした。(なお友人はその後、わざわざいわきまでこの「しそ巻」の買い出しに出かけたのだとか)

この「甘じょっぱさ」は炊き立て白米に合わせても絶品なおかずですが、又兵衛と合わせてあげることでも魅力が花開きます。

さきいかキムチ

最後は、こまやさんから「さきいかキムチ」。こまやさんの韓食って、ものすごく丁寧に作られた本場感と上質感があって大好物です。

そして、出ました。魚介類。元々が強い旨味のさきいかですが、又兵衛と共に口に含むと水分を吸って旨味がさらに出汁のように染み出してきます。そこに合わさる、本場韓国のキムチ風味。これが美味しくないはずがありません!

又兵衛の芯の太さと力強さは、実はこういうスパイシー系やエスニックともかなり相性が良いのです。辛さやスパイスに負けず、それすら抱擁してしまう。海外に日本酒を輸出しようとする場合に、大吟醸系や「辛口」も良いのですが、特にアジア圏にはそれと別枠扱いで「食中酒」として又兵衛をペアリングと共に提案してみると、かなりウケるんじゃないかと思います。特にこの「又兵衛 原酒」は、アルコール度数が高めの20%なので韓国で焼酎を合わせるのと同じような使い方が出来ますし、又兵衛の香りの良さと力強さは東南アジアなどのエスニック料理やカレーとのペアリングすら可能です。ぜひ、色んな組み合わせを試してみたいですね。

今回は、港町の酒としてはやや珍しい「足し算のペアリング」を存分に堪能できる回でした。

なお、又兵衛原酒は少しアルコールが高めなので、そのままストレートで飲む以外に焼酎と同じような楽しみ方もおすすめです。オンザロックも良いでしょうし、この季節だと「お湯割り」などもおすすめです

お湯割りにしてさきいかキムチや海鮮鍋などと合わせたりすると、もう、それは至福の時間です。まだまだ寒さが続きますので、ぜひ、又兵衛で身体を温めて健康に過ごしましょう。今月も、ご馳走様でした!(*´▽`*)ノシ

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