会津が誇る伝統の技で造られた上質の一本。(2021年6月号|豊國酒造) - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

会津が誇る伝統の技で造られた上質の一本。(2021年6月号|豊國酒造)

今月のお酒は「豊國 特別純米 福乃香 原酒」

今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さん(@sake_kaeru)が、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!

2021年6月号は、親子で酒造りに挑戦し続けている会津坂下町の豊國酒造さんからお届けする「豊國 特別純米 福乃香 原酒」です。

【連載第34回目】

会津坂下町(あいづばんげまち)──。

会津若松市から少し北西にある、人口一万五千人ほどの町だ。

会津文化を色濃く残すこの町の歴史、文化、そして祭り。いずれも多くの人を惹き付けてやまないが、中でも食文化が注目されることは殊に多い。

一つは、桜肉。いわゆる馬肉の事を指す。

会津地方は国内有数の馬食文化を誇るが、ここ坂下町は特に盛んな地域の一つである。町内では複数の精肉店が味を競い、他所では容易く口に出来ない稀少な桜肉が味わえる。食通を唸らせる上質の味わいを求めて県外から訪れる人も珍しくない。

もう一つは、質の高い発酵食品。

決して大きな町ではないにも関わらず、会津坂下町の通りには古くからの味噌や醤油の醸造元が軒を連ねる。驚くべきことに、それらが醸す品の中には国内最高の名誉といえる農林水産大臣賞の栄誉を受けたものまである。

当然、日本酒の質も極めて高い。「飛露喜」で知られる廣木酒造「天明」の曙酒造、そして「豊國」の豊國酒造という、日本酒通の間のみならず、世界的にも名が知れた三蔵が全て同じ町内の同じ通り、気軽に徒歩で歩ける圏内にあると聞けば驚くだろうか。

福島の酒を語る上で決して欠かせない旧会津藩領。その食文化を大きく支えてきたこの土地は、いわば「会津の台所」と呼べる存在かも知れない。今月届いたfukunomoからの便りは、そんな会津坂下町の「豊國 特別純米 福の香 原酒」。fukunomoのために特別に誂えたラベルの、限定酒だ。

■今月の美酒

豊國 特別純米 福乃香 原酒<河沼郡会津坂下町/豊國酒造>

封を開けると、最初に美しい吟醸香がふわっ…と漂う。福島が独自に開発した「福乃香」は、吟醸香がとても出やすい新しい酒米だ。品の良い「香気」を強く纏った酒は、まるで可憐な花のようなイメージを彷彿とさせる。

一方で、いざ口に含むと可憐さだけに留まらない深いコク、そして芳醇な味わいが広がっていく。これは決して「重い」わけではなく、質の高いコーヒーや紅茶特有の余韻にも似ている。

そのまま味わい続けると、吟醸香に交じって胡桃、あるいはカラっとローストした上等なマカダミアナッツを噛み砕いた瞬間にも似た風味を感じる。続き、淡白ながら仄かに甘くオイリーでなめらかな口当たり、削ったパルメザンチーズにも似た酸味と旨味へと繋がる。後味には僅かに感じるパイナップルのような甘味と、穏やかながらヴァイツェンビールにも似た残り香が微かに漂う。

爽やかな飲み口と強い香りがありながら、全体的な設計としてはフルーティという以上にナッティ。じわじわと広がるふくよかな旨味は、飲む程に癖になる深い味わい。最初に感じる強めの香りを活かしての食前酒としてはもちろん、じっくり味わう食中酒としても幅広く楽しめるだろう。

続いて、地の肴とのペアリングを楽しんでいこう。

今月のマリアージュ/ペアリングセットは


  • 手づくりチャーシュースライス<会津若松市/フレッシュミート会津>
  • ぶり大根<いわき市/オーシャン物産>
  • ツヴィーベルペースト<西白河郡泉崎村/ノーベル>
  • 県産きゅうり<河沼郡会津坂下町/会津よつば農業協同組合>
  • ふきのとう味噌<会津若松市/会津物産>

・手づくりチャーシュースライス

会津は喜多方ラーメンが有名な地域。必然的にラーメンのお供となるチャーシューへの期待も高まるが、今回は敢えてラーメンではなく手元にあったスティックセニョール(茎ブロッコリー)をアスパラのように斜め切りにし、共に炒めてみた。

一口目には比較的しっかりとした口当たりを感じるものの、口の中ではホロホロほぐれる絶妙な硬さが心地よい。何より味が充分沁みていて、臭みも無い。旨味がじんわり広がる。これは野菜と合わせても実に好相性で、酒のアテにはもってこいだ。

今回の酒は当初、単独で飲むと特に洋風のおつまみに合いそうな印象もあった。しかし、いざ合わせてみると甘じょっぱい醤油ベースの風味が驚くほどしっくり似合う。胡桃にも似た僅かな熟成香と交じり合って、複雑なペアリングを生み出している。さすが発酵食品が盛んな町で愛されてきた酒蔵の酒だ。やはり、地元の味と噛み合うように造られているのだろう。

・ぶり大根

知る人ぞ知る藁焼き鰹造りの名手である、いわき市中之作にあるオーシャン物産。その名を知るのは地元福島の人間でも多くは無いが、品質に対するこだわりは確たるもの。そもそも、この会社は「より最高の藁焼き鰹」を求めるあまりに、上質の鰹が多く水揚げされるこの地に藁焼き鰹の本場である高知県から移住してきたほどの存在である。現在は鰹の他、鯖や鰤などを使った加工品も手掛けている。

そんなこだわりのぶり大根を温めてみると、思わずフラリと暖簾をくぐってしまいたくなる赤ちょうちん屋台のような、魅惑的な匂いが立ち込める。新型コロナ禍で久しく忘れていた、気まぐれに夜の街を歩く楽しみが目の前に広がったかのようだ。

今回の酒とのペアリングには、これも醤油ベースの甘じょっぱさが活きる。さらに、煮込んだ鰤のねっとりした食感と強い味とが更に絡み合い、旨味が明らかに増幅してジュワジュワと口の中に溢れ出る。

まさにペアリングの醍醐味。

醤油の香ばしさと魚の強い旨味、匂い、塩気、生姜の風味、甘味全てを一気に迎えに行く豊國の力強さ。この勢いは、もはや誰にも止められない。食べる箸も止まらない。残り汁まで本当に旨い。

考えてもみれば、煮魚に料理酒は付き物で、相性が悪いわけが無い。このペアリングは、まるで口の中で料理を完成させるかのようだ。実に身体に沁みるし、居酒屋でこれを出されたら心底嬉しい。

なお、このペアリング特性の応用として、他にも魚のなめろうや生姜煮、山椒漬けなどとも好相性と思われる。特に会津は鰊の山椒漬けが名物でもある。機会があれば、この組み合わせもぜひ試してみたい。

・ツヴィーベルペースト

次は泉崎村が誇るブランド豚「夢味ポーク」と、その生産から加工まで一貫している豚肉専門店ノーベルのツヴィーベルペースト。豚のレバーペーストにバラ肉と玉ねぎを加えている逸品だ。臭みは無く、旨味の塊。肉汁がすごい。いわば豚のフォアグラと言っても過言ではなく、レバーが苦手な人にも自信を持って勧められる。

フォワグラには甘口の白ワインが定番と言われるが、今回の香り高く芳醇な豊国も決して負けてはいない。心地よい吟醸香と爽やかで澄んだ飲み口それぞれが食材の「重さ」を打ち消し、肉と酒それぞれの素材の純粋な「旨味」を延々と堪能させてくれる。食材の脂が持つ甘味が豊国のややオイリーな口当たりと甘さと出逢うことで、さらに高い次元へと昇華される感覚だ。まさに、双方の魅力を高め合う素晴らしいペアリングと言える。

・県産きゅうり
・ふきのとう味噌

ここで、県産のきゅうりを出していく。

福島は、全国トップと言えるきゅうりの名産地だ。少し強めの味が続いた中での箸休めとしてきゅうりは魅力的だが、生のきゅうり単品では少し青臭さも気になる。

そこで、きゅうりをふきのとう味噌と合わせる。こうすることで、味噌がお酒との橋渡しになってくれて、実に美味しくなる。

これは、ふきのとう味噌だけでなく今食べたツヴィーベルペーストをきゅうりと合わせても良い。それぞれの組み合わせを交互に楽しみ、味の違いや変化を確認するのも面白い。

ふきのとう味噌もまた、醤油ベースの肴と同様に味噌の甘じょっぱさがペアリングの決め手。ただし、今度はここに山菜由来の仄かな苦味もプラスされる。

苦味は味覚の中でも主張がやや強めで、合わせる酒を選びやすい。しかし上手に使うことで、アクセントとして非常に秀逸な効果を発揮する。

特に今回の豊國には熟成感やコクもあり、苦味を上手に包み込んで魅力に変えてくれる懐の広さがある。これもまた、ペアリングの力を実感できるだろう。 なお、こうした香りと苦味の活かし方はハーブの扱いにも似ているかも知れない。恐らく、この酒はハーブの風味が豊かな海外の料理と合わせても楽しめるだろう。

今回の酒は会津が誇る伝統の技で造られた上質の一本であったと同時に、日本酒が持つ新たな可能性を一層感じさせてくれた。特に、さまざまな食とのペアリングによる変化、そのポテンシャルの高さが印象に残る。ぜひ、同梱されていた食材以外にも様々な料理との組み合わせを試して頂きたい。

今月も、この佳き出逢いに感謝しつつ。ご馳走様でした。

<fukunomoお申し込みのご案内>


福島の酒は、令和3年(2021年)5月には鑑評会の金賞受賞数8連続日本一という前人未踏の記録を達成した。

しかし、魅力はそれだけに留まらない。

豊かな自然と食材に恵まれた福島県は、数多くの藩が集まって生まれた。そのため食文化も酒も実に多彩で、個性豊かだ。

しかも、福島の酒は総じて「本来邪魔になる雑味の一部を旨味に変えて生かす」技を得意とする。それは酒の品質のみならず、多彩な食材とのペアリングやマリアージュのポテンシャルの高さにも直結している。

さまざまな食材の持ち味と可能性が、「雑味すら旨味へと変えてしまう」福島の酒と合わせることで更に大きく花開く。海のものだろうと、山のものだろうと、異国の料理でさえも。その変化が、実に面白い。

そんな福島から地酒と地肴のペアリングが毎月届くfukunomoには、他ではなかなか味わえない新鮮な驚きと面白さ、非日常がつまっている。

新型コロナ禍で外出が難しい今こそ、ぜひご一緒に。

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