日本酒の伝統的な味わいをより自由に、より多様に発展させた新世代のお酒(2021年4月号|夢心酒造株式会社) - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

日本酒の伝統的な味わいをより自由に、より多様に発展させた新世代のお酒(2021年4月号|夢心酒造株式会社)

今月のお酒は「純米大吟醸 奈良萬」、「純米吟醸 奈良萬」、「純米酒 奈良萬」

今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さん(@sake_kaeru)が、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!

2021年4月号は、今や全国の日本酒ファンに名の知れた「奈良萬」を手掛ける喜多方市の夢心酒造さんからお届けする「純米大吟醸 奈良萬」、「純米吟醸 奈良萬」、「純米酒 奈良萬」の3種飲み比べセットです。

【連載第32回目】

今年は春が駆け足でやってきて、桜もあっという間に咲いてしまいましたね。

皆で集まってのお花見は難しい昨今ですが、それでも桜は今年も綺麗。みなさんそれぞれに桜を楽しめたでしょうか。

さて、今回のfukunomoは喜多方市の夢心酒造さんからのお酒です。

夢心酒造さんの創業は明治10年。「夢心」というどことなく幻想的で素敵な名前にも、まるで日本むかしばなしのような由緒があります。

『酒造りに熱心な七代目当主の東海林萬之助氏は、毎日朝早くから夜遅くまで良い酒を造ろうと研究に没頭し、寝食を忘れて働いていました。しかし会津はかねてより酒造りが盛んな地。多くの酒蔵が切磋琢磨を繰り返す中で、地元を唸らせる程に良い酒を造ることはそう簡単ではありません。

そんなある夜、夢枕に「朝日稲荷」と名乗る神様が現れて言いました。「汝の心掛け殊勝なり、酒造りの秘伝を伝授すべし。」と。

目を覚ました萬之助氏が早速神様のお告げ通りにお酒を試造してみると、なんと不思議なことに、香り、コク、ともに類稀なる芳醇な銘醸を得ることができたではありませんか。

その酒の評判はたちまち会津一円に広まり、県内外でも噂となって大いにもてはやされました。

萬之助氏は、これは神様のおかげと思い深く感謝をしつつ、是非お礼をしようと思いました。ところが、夢枕で聞いた「朝日稲荷」という名前には、とんと思い当たりがありません。あれはやはり、ただの夢だったのか。本当は、「朝日稲荷」なんてどこにも無いのかも知れない。当時は、インターネットはおろか電話も無いような時代です。萬之助氏は、困り果てました。

それでも萬之助氏は諦めず、四方八方に手を尽くして「朝日稲荷」について調べました。するとどうでしょう。同じ福島県内の須賀川市に「朝日稲荷」という神社があることを、とうとう見つけることが出来たのです。

萬之助氏は早速、感謝と報告のために重い重い酒樽を背負って一人、喜多方より須賀川までの長旅を歩きました。険しい山を越え、谷を越えながら何日も歩いて、とうとう朝日稲荷に辿り着いた萬之助氏は、やっとのことで酒樽を奉納して感謝の真心を捧げることができました。

しかし想いを果たした途端、萬之助氏は疲れと安心からか、社頭でうとうとと眠ってしまいます。

すると、萬之助氏は再び夢を見ました。夢の中では、朝日稲荷の中庭で満開に咲き誇る「中丸桜」の花びらがそよ風でおおいに舞い広がり、あれよあれよという間に萬之助氏の全身が花びらに優しくつつまれました。そこに再び神様が現れてこう言ったのです。

「よくぞ詣りしよ。汝の造る酒に『夢心』と名づくべし」

夢よりさめた萬之助氏はさっそく商標を『夢心』と定め、桜の花をあしらうようにしました。そうした生まれた「夢心」はその後も広く人々に愛され、今でも朝日稲荷神社の春秋の祭典には昔を今に忍び、御神酒をお供えするのがならわしとなり今日に至るとのことでした。めでたし、めでたし。』(夢心HP須賀川市朝日稲荷神主の談話を編集・構成しました)

それでは音に聞こえし「夢心」、その評判の味わいを楽しんでいきましょう♪

■今月の美酒<喜多方市/夢心酒造>

・奈良萬 純米大吟醸

・奈良萬 純米吟醸

・奈良萬 純米酒

「奈良萬」シリーズは『喜多方の、夢心でしか出来ない酒を造りたい』という夢心酒造さんの強い想いから平成10年に立ち上げられたブランドで、現代の日本酒人気を強く支えている、しかし当時はまだまだ珍しかった「日本酒の伝統的な味わいをより自由に、より多様に発展させた新世代日本酒」の先駆けでもあります。

ブランド内でのバリエーションも豊かでさまざまなテイストを楽しめますが、今回は「純米大吟醸」「純米吟醸」「純米酒」の3種を贅沢に飲み比べできるセット。これは嬉しい!

また、本来「奈良萬」は特約店専用酒ですので、一般量販店では買うことが出来ない特別なお酒でもあります。それが贅沢に3種もお手元に届くfukunomo、やはり特別感、お得感がすごいですね。

それでは早速、純米大吟醸から味わってみましょう。

口に含んだ瞬間の印象は、新鮮な青リンゴ瑞々しい果実を丸かじりしたような爽快感と、抜けるような香り。続いてジューシーな旨味がとめどなく溢れ、それでいながら余韻はおだやか。これはどんどん飲めてしまう飲み飽きなさがあるお酒ですね。

純米吟醸は、それと比べて香りは少し控えめで、和梨の果汁を集めたような優しい甘味が特徴的。旨味と香りのバランスが取れた中庸的な1本。あらゆるシーンでの使いやすさが光ります。

純米酒は米の旨味が強調された味わいで、炊き立ての香り漂うキラキラした新米のイメージが強い。透明感ある上品な旨味と、口に含むと、ほろりとほぐれていく白米のあの感覚にも似た絶妙な口当たりです。

ただ、この気配は純米酒だけに限らず、3本いずれにも共通しているかも知れませんね。お米が持つ風味、滋味を大切に醸した芯の強さが一貫しているというか。

言うならば、たとえば「最高に旨い米の新米炊き立て」という感じでしょうか? それは特Aの米の産地数が4年連続日本一(2021年4月現在)になった福島でさえも滅多に出逢えない、稀少で特別な究極の味わい。

瑞々しくツヤがあり、全く濁りを感じさせない澄んだ佇まい。特有の上品で淡い香りがあり、しかし旨味も極めて強い。ところが、それほど強烈な旨味でありながらも全くしつこさを感じさせない。口に入れた瞬間からすーー…っと消え入るように口の中で融けて、心地よい余韻が残される。いくらでも食べられるのに、食べ疲れやモタれが全然こない。あっという間に茶碗からご飯が消えてしまう。

まさに、そういう「本当に旨い極上米」の新米を、理想的に炊いたばかりの状態でそのまま閉じ込めたようなお酒──。それが夢心、「奈良萬」ブランドの根底に通じる旨さの秘訣と言えるのかも知れません。これはお酒をペアリングにしたときに感じさせる、「ご飯のおかずに合うもの全般に合う」というべき守備範囲の広さにも通じています。

それでは、奈良萬のお酒それぞれを、おつまみと合わせていきましょう。

今月のマリアージュ/ペアリングセットは


  • めひかりの開き干し<福島県いわき市/上野臺豊商店>
  • 山うど油炒め<福島県大沼郡会津美里町/カネマスクリキ食品>
  • そばの実なめこ<福島県会津若松市/オール物産>
  • しそのみ漬<福島県喜多方市/伊藤金四郎商店>
  • チャプチェ<福島県白河市/こまや>

・めひかりの開き干し

まずは、上野臺商店さんの「あおいち小名浜めひかり開き干し」。去年新発売されたばかりの、常温保存OKレトルトパックバージョンです。

メヒカリは水深100~300メートルほどの深海に生息するお魚。脂のりが良く、身はふっくらで皮もやわらかい、一度食べたら忘れられないほど美味しいお魚です。

しかも、調査によると福島県産のメヒカリは他地域産の同サイズのメヒカリと比べて、特に脂がのっていることが確認されていたりして。旨い中でも特に旨いメヒカリ、いわばキング・オブ・メヒカリ(?)が食べられる福島。秋刀魚やカツオの水揚げも豊富ないわき市で、それらを差し置いてメヒカリが「市の魚」に制定されているのも頷けますね!

そんなメヒカリは、シシャモ同様丸焼きにしたり、ワカサギのように唐揚げや天ぷらにしたりで食べるのが一般的ですが、実は最も美味かつ贅沢なメヒカリの食べ方と言えるものが、「開き干し」です。

ただでさえ脂が乗りまくったメヒカリの中でも稀少かつ上質な大きめサイズ(これに相応しいメヒカリは多くないのです)を選び、1匹1匹手間暇かけて丁寧に開き干しにすることで、その旨味とポテンシャルが最大限に引き出される、とっておきの宝石のような1品。そう、それがまさに、今fukunomoからお手元に届いているソレです。

実際、パックを開けてみると歴然としますが、まるで高級霜降り黒毛和牛を思わせるほどにジューシーな脂が染み出てきます。そのまま食べるのはもちろん、軽く炙るのも実に佳き。まさに絶品という他ありません。

これはすさまじい旨味の塊でありつつ、同時に白身魚ならではのクセのなさと相まって、お酒の相性は特に良いですね。そもそも、美味しい白身魚が「理想的な白米」の風味を閉じ込めたような奈良萬に合わないわけがないわけですけれども。まさにジューシーで、相当病みつきになります。

山うど油炒め

続いては山うど油炒め。山菜などに代表されますが、実は、春の旬の真髄は「苦味」。世の中には「春は苦味を盛れ」ということわざがあるほどだったりします。

苦味は取り扱いが難しく、過ぎれば全てを台無しにしてしまうもの。しかし同時に、苦味があることで味わいに深みと奥行き、そして「コク」が加わるという美味しさにとって欠かせない要素でもあります。たとえば柑橘類を絞ってジュースにするときには、皮と果肉の間にある白い「ワタ」の苦味を僅かに加えることで、味わいに深みとコク、奥行を圧倒的に感じさせるジュースになるのだとか? お酒とのペアリングでも、「苦味」をいかにうまく活かすかが鍵とも言えるでしょう。

今回の山うどは、比較的自然の風味を活かした素朴な仕上がりで、苦味もやや穏やか。これは味わいにアクセントが欲しいタイミングで口にすると、食事全体のまとまりがグッと引き締まりますね。そこに奈良萬を合わせてあげると、お酒が持つ自然な甘みが山うどをより美味しく感じさせてくれる。ちょうど春の季節感もあるし、なかなか効果的なペアリングと言えますね。

・そばの実なめこと、しそのみ漬

次に今回は、ご飯のお供にも美味しい二つのおつまみを敢えてブレンドして同時に味わいます。 そばの実とナメコのなめらかな口当たりと甘さシソの実のプチプチと心地よい食感と僅かな苦みが奏でるハーモニーは、なかなか上等な珍味であります。少し塩気が強くなるので、ここに湯豆腐とか大根おろしを合わせてあげるとスッキリした感も出せてさらに良いですね。もちろん、ご飯のお供にピッタリなこれらは今回のお酒ともピッタリ。加えて余った分は、おかずとしても美味しく頂けちゃいます。

チャプチェ

私は大学生時代に随分韓国人の友人たちと仲良くさせて頂いていたんですが、このチャプチェはまさにその頃に食べていた本場の味が楽しめます。胡麻油の香ばしい風味と甘さ、麺の旨味。どれをとっても、本当に丁寧に造られていることが判りますね。

白河のこまやさんは福島に根付いて20年。地元野菜を使ったキムチなどが評判で、最近は、福島を拠点に海外に商品展開までしている韓国食のお店だったりします。流石は、福島県内唯一の百貨店「うすい」のデパ地下の韓国食を任されるクオリティですね。

なお日本酒と韓国食(日本料理を和食と呼ぶように、韓国語ネイティブは「韓食(HanSik)」って呼びます)、マッコルリに少し似たどぶろくに限らず割と相性良いもの多いと思うんですよね。キレの強さ以上にまろやかさが持ち味のお酒だと特に。

奈良萬の場合、韓食の強い味わいにも負けない芯の強いその旨味と包容力は、純米酒はもちろんのこと、純米大吟醸、純米吟醸でも韓食のポテンシャルを充分に引き出してくれます。そういえば韓国料理や焼肉類に入れると美味しい隠し味って、これらの純米大吟醸、純米吟醸それぞれの香りにも感じた林檎や梨でしたよね。この風味同士のマッチ具合、なかなか意外性もあって面白いペアリングかも。

今回は、特約店専門ブランド「奈良萬」の3種飲み比べセットを楽しませて頂きました!

「夢心」の名に相応しい夢のような美味しさの酒それぞれの個性の違いを楽しみつつ、ペアリングも春の旬を感じさせるもの、福島名産のめひかり、そして福島発の韓国料理との合わせ方。まさに多様性を体現するかのようなお楽しみセットに、今月も大満足です。ごちそうさまでした!(*´▽`*)ノシ

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