華やかな中にもどこか「陰」の気配を感じさせてくれる酒~fukunomo愛好家 林さんの今月の酒語り(2021年1月|末廣酒造株式会社) - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

華やかな中にもどこか「陰」の気配を感じさせてくれる酒~fukunomo愛好家 林さんの今月の酒語り(2021年1月|末廣酒造株式会社)

今月のお酒は「末廣 山廃純米吟醸 赤べこ」

今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さん(@sake_kaeru)が、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!

2021年1月号は、山廃といえばこの酒蔵、会津若松市の末廣酒造さんからお届けする「末廣 山廃純米吟醸 赤べこ」です。

【連載第29回目】

新年あけましておめでとうございます!
昨年は、どなたさまも色々大変なことが多かった1年ではありましたけれども。
せっかくの新しい年を迎えたわけですから、ここは少しでも明るい話題で景気づけしていきたいところですね!
そんな一年の初めには、やはり縁起物としてfukunomoがピッタリ! 今年も早々に、日常を彩る幸せを届けてくれました。

 

・末廣 山廃純米吟醸 赤べこ

今回のお酒は、会津若松市の末廣酒造さんから「末廣 山廃純米吟醸 赤べこ」です。今回は限定デザインのラベルになっているものの、この山廃純米吟醸はG20大阪サミット(令和元年6月)の首脳夕食会にて提供されたお酒の中身そのもの。各国首脳を歓待したお酒が年明け早々にお手元に届くわけです。fukunomo、やっぱりお得感がスゴい。
また、今回のラベルに描かれている福島名物の「赤べこ」も、その由来の1つは天然痘の疫病を払ったとの言い伝えから始まったとの説もあります。昨年は疫病退散を願ってアマビエさまが全国的なブームにもなったまさに今、福島から全国にお届けする新春第一号のお酒としてうってつけですね。まさに新春の縁起物以外の何物でもありません! 実にめでたいので、お神酒のつもりで飲みましょう。(*´▽`*)

さて、今回の醸造元、末廣酒造さんについて語ろうとすると、実はネタやエピソードの宝庫過ぎてどれを採用するべきか迷います。
もちろん第一には、「末廣さんは、美味しい!!」が来るのですが、それは後でじっくり語るとして。蔵に遊びに行くのが楽しい! というのもポイントです。

会津若松駅からの市内周回観光バスでも気軽に立ち寄れる末廣酒造さんの嘉永蔵は、2013年のNIKKEIプラス1「訪ねて楽しい日本酒の蔵元」ランキングで堂々の日本一にも輝いた、行って楽しめる場所なのです。
蔵では末廣酒造さんの酒造りそのものを深く知ることができるのはもちろん、末廣酒造さんと深い深い関わりがある野口英世博士(千円札紙幣の、あの人です!)の足跡や徳川最後の将軍、慶喜公の書があったり、歴史的価値を感じさせる展示品が盛り沢山! 新型コロナウイルスの流行が少し落ち着いたら、改めて蔵元を訪ね歩くこともおすすめです。

それでは早速、お酒を開けてまいりましょう♪

今回のお酒は山廃(やまはい)仕込み。山廃とは自然の酵母から優秀なものを選別して伸ばし醸す醸造法で、現代多くの蔵で採用されている速醸酛よりも醸造に時間がかかる分、豊富なアミノ酸によって芯がしっかりして重層的な、いわばフルオーケストラのような奥行きある旨味の協奏が楽しめます。
この「山廃」という製法は、江戸時代など古来から行われてきた伝統的生酛造りから「山卸(やまおろし)※1」という工程のみを廃止したものです。末廣酒造さんは明治時代に確立されたこの山廃製法を日本で初めて大規模に実践した蔵とも言われ、その発展に大きな役割を果たしてきました。末廣酒造さんは古くから県民に深く、広く愛されてきたのみならず、歴史と伝統、文化、そして同時に時代の先を行こうとする気鋭の精神、いずれも併せ持った稀代の蔵元と言えるでしょう。

※1 酒のもととなる酒母をつくる過程で、蒸米、麹、水を混ぜ合わせ、櫂(かい)という棒状の道具でどろどろになるまですりつぶす工程。

まず一口目。山廃ならではの力強い芳醇な旨味がありながらも野暮ったさが全く無く、まるでしぼりたての生酒を思わせる程の爽やかさそして立ち上る心地良い吟醸香。まさに、洗練されたプロのオーケストラ集団から放たれた和音の一声。圧倒的な迫力を感じさせます。これが会津杜氏の技、「山廃」の元祖とも言える酒造の実力。流石だと言わざるを得ません。
次いで、爽やかな口当たりの中にも非常に奥行きを感じさせる多層的な深い味わい。世の中で同じ「ブレンドコーヒー」と呼ばれるものが豆や技によって全く別物となるように、同じ「山廃」と呼ばれる酒でもここまで違うものかと感嘆させられます。

また、個人的に末廣酒造さんが持つ大きな魅力の1つと感じている要素に、華やかな中にもどこか「陰」の気配を感じさせてくれるところがあります。ちょっと判りにくい伝え方かも知れませんが、同じオーケストラ演奏でも、曲目がモーツァルトというよりはシベリウスやチャイコフスキー…みたいな感じでしょうか。
この「陰」の魅力は先々月の「寿々乃井 ひやおろし」でも大いに語ったものですが、個人的に愛してやまない、もうたまらなく好きな風味でして。一方、それを感じさせるお酒を醸す蔵元は稀有で、決して多くはないのです。

末廣酒造さんの酒、特に吟醸クラス以上の精米歩合になると、その風味が一際強く開花します。思えば私が若く、日本酒の魅力を覚えたてだった頃に大吟醸を選ぶとき、特に好んで何度も繰り返し飲んでいた酒は、この蔵元の「」や「」といったお酒でした。
さらに末廣酒造さんの場合、以前ご紹介した寿月ひやおろしと似た「陰」の魅力とはいいつつも、寿月のアンニュイさを感じる「儚さ」とはまた異なった、「凛とした」和の強さと美しさをより強く感じさせます
春で言うなら、鶴ヶ城の風に舞う桜吹雪。夏ならば、ひぐらしの声。いまの季節で言えば、冬の朝、しんしんと降り積もる雪の静寂。白銀に染まった和の屋敷と庭園、凛と張り詰めた息を呑む空気。雪深い自然と洗練された文化の薫りとが交わる会津ならではの、侘び寂びを感じさせる美。そうした情景が思い浮かぶ酒です。
「その土地の酒を味わうことは、その土地の文化を感じ味わうことだ」というのが私の持論ですが、末廣の酒を味わうことは、まさに「会津文化の真髄を味わう」ことにも通じるのではないかと感じます

それでは、いよいよ今月もおつまみとのペアリングを楽しんでいきましょう。

 

今月のマリアージュ/ペアリングセットは


    • にしんの山椒漬け<福島県会津若松市/松本秀子さん>
    • 蔵醍醐 クリームチーズのみそ漬<福島県南相馬市/みそ漬処香の蔵>
    • べったら漬<福島県郡山市/小田原屋>
    • 姫筍の土佐煮<福島県大沼郡会津美里町/カネマスクリキ食品>
    • 高原花豆<福島県郡山市/きのこ総合センター>

・にしんの山椒漬け

会津の食文化を語る上で欠かせない「にしんの山椒漬け」。今回のfukunomoにも入ってきてくれました。

これは嬉しい! 単純に美味しいおつまみであるのはもちろんのこと、今回のように会津文化を特に強く感じさせる酒には、やはり会津の食文化も合わせたいところです

長くfukunomoユーザーを続けてきた方はご存知かと思いますが、会津のにしん山椒漬けの特徴として、爽やかな酸味と山椒の香り、それと対になる熟成された強い旨味のハーモニーの心地良さが挙げられます。ここに今回のお酒を合わせると、まずは吟醸香と山椒の香り、続いてお酒の山廃造りでの乳酸由来の酸味と熟成感ある旨味とがニシンと共鳴し、洗練されたフルオーケストラにさらに演奏パートが増えるかのよう。お酒もおつまみも、グイグイ進みます。

 

・姫筍の土佐煮

ここに合わせてあげるのが、姫筍の土佐煮この柔らかい姫竹を噛むたびに響く、小気味良い食感。じわじわと滲み出てくるカツオ風味。これまたお酒も食もグイグイ進む、たまらない一品です。しかしこれ毎回思うことではあるんですが、今回のペアリングセットもまた、あっという間にお酒が減っていく…!

しかしこれ、改めて本当に美味しいし汎用性高いおつまみですね。ご飯のおかずにもなるので、食べながらすでにリピートしたくなってきます。

 

・蔵醍醐 クリームチーズのみそ漬

続いては、南相馬市から「JR東日本おみやげグランプリ2018『家族に贈りたいおみやげ賞』」を獲得した、香の蔵さんの「クリームチーズのみそ漬」。とろけるような柔らかな食感と、まさに「香の蔵」の名を体現するかのような、味噌が醸し出す香り。

そのままでも美味しいのはもちろんのこと、和の味覚である味噌を洋の味覚であるチーズに合わせることで、ペアリングにおいて他の食材同士やお酒を上手に橋渡しして繋げてくれるような役割も果たしてくれます。この一品があるだけで、全体でのペアリング完成度がグっと高まりますね。

 

・べったら漬け

 

・べったら漬け<小田原屋>

ここで小田原屋さんの「べったら漬け」を。ここ小田原屋さんのべったら漬けは、一般的なものに比べて甘さ控えめでべたつきにくい、サッパリと軽い食感のべったら漬け。これは特にお酒のツマミにも使いやすい。今回のペアリングの中で特に爽やかさが際立つので、箸休めにもぴったりです。

 

・高原花豆

最後は、郡山のきのこ総合センターさんから「高原花豆」。やさしい甘味がお酒の席に一味加えてくれます。クリームチーズの味噌漬けと合わせると、スイーツ気分で楽しむこともできますね。
なお、盆地である郡山の会社の花豆がなぜ「高原」なのか、
紫花豆の中でも特に高地で育った粒の大きいものが「高原豆」と呼ばれること由来なのか、この製品の加工地があぶくま高地の小野町だからなのか定かではありませんが、それはともあれ。
「小野町で作られている花豆」といえば実は小野町、あまり知られていないのですが地元菓子店の「花豆」が長年密かに愛好されており、花豆に一家言ある人も少なくないのだとか?
今回届いたきのこ総合センターさんの花豆は、そんな土地で作られている逸品。これがまた、各地で「美味しい」と評判でじわじわ人気を集めはじめています。この花豆にいち早く目を付けて全国に送ってしまうとは、さすがfukunomoさんですね。

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新春1回目のfukunomoでしたが、今回もめちゃくちゃ楽しませて頂いちゃいました。

明るい話題が少ない世の中、「ステイホーム」が再び叫ばれている中ではありますが、そういう中での生活にも、毎月のささやかな幸せを。ぜひ、今年もfukunomoをご一緒に楽しんでいきましょう。今年がみなさんにとって、良い年となりますように!!

<fukunomoお申し込みのご案内>


みなさまからの応援もあって再開したfukunomo。もし良ければ、みなさまご一緒に楽しみませんか?

 

特に今回の再開は、新型コロナウイルスでの影響から立ち直ろうとする福島県内の酒蔵さんやおつまみの企業さんを応援する一面もありますので、ぜひご利用頂ければ幸いです。

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