世界を獲る日本酒を探る -データ解析で浮かび上がる250本のIWC受賞酒の魅力- - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

世界を獲る日本酒を探る -データ解析で浮かび上がる250本のIWC受賞酒の魅力-

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日本国外で開催される日本酒コンテストの中でも最大級のIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)。SAKE部門は創設されてまだ9年と日が浅いですが、国際的な日本酒の登竜門として早くも注目されています。
http://www.internationalwinechallenge.com/
日本酒は様々な味があり、日本国内で評価の高い日本酒も数多くあるのですが、日本人の好みと海外での好まれる日本酒の味にはどのくらい違いがあるのでしょうか?国外の一流ホテルにも日本酒を提供し、福島県内ではトップの輸出高を誇る奥の松酒造の遊佐社長ですらも「IWCはよく分からない、狙いづらい賞です」と話しておられます。福島県は全国日本酒鑑評会の金賞最多受賞をはじめとし、たくさんの賞を受賞する蔵が大変多い件です。その福島県で3番目に大きな奥の松酒造にとっても狙いづらい賞となると、その難関具合が察せられます。
美味しいお酒と一言で言っても、それがイメージする味は千差万別。世界を獲る日本酒はどんな味をしているのでしょうか?IWCの受賞酒には一本一本それぞれに「テイスティングノート」という審査員のコメントが英語で記載されています。今回は2016年のIWCで金賞、銀賞、銅賞を受賞した約250本の日本酒のテイスティングノートをデータ解析し、高い評価を受けたポイントを探り出しました。
IWC受賞酒にはそれぞれ、テイスティングノートとして英語で味の特徴が記載されています。
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全てのお酒のテイスティングノートをテキスト形式で取得し、単語ごとに分解して、それぞれの単語の出現頻度を章ごとに測定しました。
まずは金賞受賞酒の結果です。金賞は約50本の日本酒が受賞しています。
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中央に大きく表示された”Finish”(後味)と”Palate”(味)が目をひきます。Finishの方がより大きく、後味に多く言及されていることが見て取れます。また”Notes”(香りがする)、”Nose”(匂い)、”Aromas”(香り)、”Hints”(ほんのり香る)といった香りに関するキーワードも目につき、香りに力点が置かれたコメントが多いことが分かりますね。
では具体的にどのような味や香りが評価されているのでしょうか?中央の”Fruit”を筆頭に、”Pear”(洋ナシ)、”Banana”、”Peach”、”Apple”、”Pineapple”といった果物の名前が並んでいます。また”Acidity”(酸味)や”Fresh”といった表現もあるところを見ると、新鮮な果物を思わせる酸味や香りへの言及が多いようです。”Ripe”(熟した)より”Fresh”や”Refreshing”(爽やかな)が大きいところを見ると、熟成味より新鮮さに対する評価が高いのかもしれません。この点は”Clean”(すっきりした)も大きいところから判断できます。
もちろん”Balaned”(バランスのとれた)や”Complex”(複雑な)が大きく表示されている通り、特定の風味が主張するのではなく全体的なバランスが求められるのは言うまでもないようです。
どうやら金賞受賞酒は、飲みやすく新鮮な洋ナシやバナナのような風味に特徴がありながらも、バランスの取れた複雑な味わいのお酒が多かったようです。
次に銀賞受賞酒の結果です。銀賞は約100本の日本酒が受賞しています。
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中央に大きくFinish”(後味)と”Palate”(味)、また香り関連の言葉が表示されている点は同じですが、”Balanced”は後退し”Acidity”と”Fresh”が大きくなっています。果物系の風味も依然として高い評価を得ていますが、こちらは”Melon”が圧倒的ですね。また”Smooth”(スルスルした)、”Texture”(質感)が非常に大きくなっており、滑らかな味わいへの言及が多いようです。
新鮮なメロンのような風味と酸味に特徴のある、滑らかな味わいのお酒――それが平均的銀賞酒の味だったようです。
最後に銅賞受賞酒の結果です。銅賞は約100本の日本酒が受賞しています。
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中央に大きくinish”(後味)と”Palate”(味)、また”Notes”と”Nose”といった香り関連の言葉が表示されている点は同じですが、なんとここで”Acidity”を差し置き存在感を放つ”Umami”(旨味)。今までは果物の名前の背後に隠れていた”Rice”もようやく顔を出しました。”Fresh”よりも”Ripe”が大きくなり、”Dry”(辛口)よりも”Sweet”,”Sweetness”といった言葉が目立つようになります。
これだけ見ると日本酒らしい、濃厚旨口のお酒が評価を受けたのかな?とも思いますが、しかしやはり”Clean”はしぶとく残っています。やはりここでもすっきり感は外せないようです。
なお、もっとも登場回数の多い果物は”Apple”でした。賞のランクによって評価される果物の種類が違うのはなかなか面白いですね。

吟醸酒に定評のある名倉山酒造の松本社長は、
「吟醸香の主成分はカプロン酸エチルと酢酸イソアミルだが、カプロン酸エチルのみだとリンゴの香り、酢酸イソアミルはメロンの香りと言われています。この2つの物質のバランスや、他の物質と生成した化合物によってどんな果物の香りになるかが変化しますが、制御は非常に困難」
と語ります。

フルーティーな香りも日本酒の大きな魅力のひとつです。日本国外にもこの香りのファンが広まるといいですね。