福島市内のこだわり酒店「橘内酒店」店主が語る“日本酒の楽しみ方” - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

福島市内のこだわり酒店「橘内酒店」店主が語る“日本酒の楽しみ方”

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先月、1月27日(水)に新宿で行われた社団法人ふくしまチャレンジはじめっぺ主催の
「こらんしょ福島県人会 福汁Night 第二弾~あんこう鍋と日本酒の会」に、
福島市で酒店を営む橘内賢哉さんが来場され、
主催の小笠原とともに日本酒に関するトークショーを行いました。

初心者がまず始めるべきことや食べ物との合わせ方、
そして福島のお酒の魅力など、
日本酒愛あふれるお話が盛りだくさん!
ココだけの貴重なトークの模様をお届けします。
 
日本酒初心者こそ酒屋へ行け!
 
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小笠原隼人(以下、小笠原)
では、橘内さんの方から自己紹介をお願いします。
橘内賢哉(以下、橘内)
みなさん、おばんでございます。
福島市で酒屋をやってます、橘内酒店の橘内と申します。
うちは和酒を中心にやってまして、
日本酒だったり焼酎だったりそういう酒屋です。
特に日本酒は福島県内のものを揃えてまして、
福島中心にやろうと決めたのが、ざっと20年前くらい。
そのころから福島県のお酒がおいしいなと感じていました。
私は2代目なんですが、それまで普通の酒屋だったのをちょこちょこ変えていこうと思って、
今、それがだんだん形になってきている状況です。
小笠原
実は私、日本酒にはあまり詳しくなくて。
興味はあるけど、難しそうだなという人のために、
今日は日本酒が好きになるきっかけとなるようなお話ができればと思います。
早速、橘内さんの普段の活動や、日本酒にあまり詳しくない人に向けて伝えたいことなどをお伺いしたいんですけれども。
橘内
はい。
私が本当にずっと長い間思ってきたのが、「日本酒ってこんなにうまいのに、どうしてみんな呑んでくれないんだろう」っていうこと。
今でこそ“日本酒ブーム”なんて言われてますが、
20年前は誰も見向きもしないような状況だったんです。
日本酒は日本人が作ったお酒なので、絶対日本人の体には合っているはずなのに、どうして皆さん手を伸ばしてくれないんだろうと。
だったら、手に届くようなところで、アピールしていけばいいんじゃないかなと思って始めたのが、ここ10年くらいの活動になります。
小笠原
具体的にはどのようなことをされてきたんですか?
橘内
たとえば福島市内の街なか広場で「ふくしま地酒の陣」という日本酒のイベントをやってたりしています。
市内の飲食店さんが選んだ日本酒とお料理をそれぞれブースで出していただいて、
好きなだけ食べて飲んでいたくだくというイベントです。
なかなか日本酒に手が伸びない背景には、どうやって買ったらいいかとか、どれがおいしいのかがわからないっていうのがあるような気がしていて。
そんな方たちのために飲食店さんを通して日本酒を知ってもらおうと考えています。
酒屋さんに行っちゃうと、いきなり一升瓶を買うようなことになってしまうけど、
お店だと1杯から飲めますよね。
そうするといろんなトライアルができるので、より日本酒に興味を持ってくれるんじゃないかと思って活動しています。
小笠原
今日なんかもまさにそうですよね。
食べ物があって、その中で好きなものを楽しんでいただくという。
橘内
そうですね。
小笠原
じゃあ、たとえば「今日をきっかけに日本酒に詳しくなりたい」「もっと知りたい」って思う人がいた場合、明日からどういうふうにお酒と付き合っていけばいいか、アドバイスはありますか?
橘内
みなさん、「日本酒には興味があるんだけど、どっから入ったらいいのかな」って思ってらっしゃると思うんです。
日本酒って多種多様だし、どこから手を出して自分の好みを見つけていけばいいのかが難しいんですよね。
そのために実は酒屋さんがあるんですよ。
今の酒屋さんは昔と違って、店主とお話して仲良くなっていくと、
いろんな知識が得られるはずですので。
まずは酒屋さんに行ってみることだと思います。
小笠原
なるほど。
橘内
それも百貨店やスーパーの中の酒屋さんではなく、町の商店街の中にあるようなお店をオススメします。
小笠原
とはいえ、酒屋さんもたくさんありますし、いい酒屋を見極めるポイントみたいなことはありますか?
橘内
そう、どの酒屋さんでもいいわけではないんです。
ガラッと扉を開けたときに、「あれ? 間違っちゃったかな?」という酒屋さんもあるんですよ(笑)。
でも何軒か見ていくうち、「ここは本物!」っていうような酒屋さんが絶対出てくると思うんです。
で、どんなところを見ればいいかって言うと、まずはワインにしても日本酒にしてもきちんと冷蔵庫で管理してるかですね。
小笠原
してないこともあるんですか?
橘内
ありますよ〜!
なので、お店に入って冷蔵庫がちゃんと並んでるところは間違いないと思います。
これは日本酒をメインでやってる酒屋さんでしたら、外せないところです。
あとは店内の照明が明るすぎないこと。
日本酒っていうのは光と温度に弱いんで、ちゃんと冷蔵庫で管理されてて、
光も強すぎなくてっていう環境にしてあげられてるかだと思います。
ほかには、お酒に対して1本1本ちゃんとコメントが書いてあるようなところだとベストです。
そういうところに店主がお酒を愛しているかどうかが表れると思います。
小笠原
なるほど、お店に店主の愛が感じられるかどうか、ですか。
橘内
そうですね。
本気の酒屋さんは熱量も高いですから。
そんなところで見ていだけると、どんな酒屋さんで買えばいいかわかってくると思うので、
気に入った酒屋さんがあったらその店主と話をしてみて、自分の好みのお酒をひとつ見つけるんです。
自分の軸となるような、「これが一番好き!」っていう味のバランスが、みなさんあると思うんですけど、そこから甘いもの/辛いもの、香りがあるもの/ないもの、あとは新酒がいいか熟成酒かっていうセレクトになっていくので、
まずは酒屋さんに相談してみてください。
「こないだ居酒屋さんでこんなお酒呑んだんだけど、近いものある?」とか。
酒屋は蔵元さんと消費者の間に立って、蔵元さんの想いを代弁をする役目なんです。
蔵元さんはお客さんひとりひとりとお話することはできないじゃないですか。
でも酒屋はそれが使命ですから。
店主と話をするっていうのは大前提ですね。
みなさん、ひるまないでどんどんしゃべってください!
小笠原
僕は今までお酒をインターネットとかで買っちゃってたんですけど、
酒屋さんの重要性がすごくわかりました。
明日まずすべきことは酒屋に行くことですよ、みなさん!
橘内
本当にいろいろ歩いて、好きな酒屋が見つかると、
酒ライフはどんどん広がっていくので楽しいと思いますよ。
小笠原
そして、お店に通って自分の好きな味を見つけていくと。
橘内
そうです、中心となるお酒を見つけて。
それでいろいろ学んだら、雑誌などに書いてあることも理解できるようになると思いますから。
そうすると、「あ、このお酒、自分の好きな酒屋には置いてないな」っていうことが出てくると思います。
そのときが、別の酒屋への船出になるわけですよ。
小笠原
最初は、あまり浮気しないほうがいいですかね。
橘内
そうですね。
当てずっぽうでいろんなところに行ってしまうと、わけのわからないセレクトで買っちゃったりして中心がつかめなくなりますから。
小笠原
酒屋さんとコミュニケーションすることで、お酒がどんどんわかってくるんですね。
非常にわかりやすい“How to”です。
明日からぜひ実践してほしいです。
 
福島県は“日本酒のデパート”!?
 
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小笠原
では、次に福島のお酒がほかの地域のお酒とどう違うかという点について教えてください。
橘内
あー、これが需要なところなんですよね。
例えば新潟のお酒と聞くと、いわゆる淡麗辛口というイメージを持つ方が多いと思います。
また、山形だと「十四代」のような非常にフルーティーで香りの高いお酒を作る蔵が多いので、吟醸酒の県というイメージですよね。
このほか、味が硬めのシャープなお酒のイメージが強いのが宮城県。
このように、だいたいは地域ごとにお酒の方向性が似通ってしまうものなんです。
そして、ここで福島。
福島は広いですよね。
浜通り、中通り、会津とそれぞれ気候も食べるものも全然違います。
お酒の作り方はその土地の郷土料理と必ずマッチングしてますから、いろいろなタイプのお酒が生まれているんです。
生魚を多く食べる浜通りでは、どちらかというとお刺身などに合う端麗なお酒がよく飲まれているし、味の濃い保存食がよく食べられている会津では甘くて濃い、辛くて濃いみたいなお酒がたくさんあります。
小笠原
なるほど、「はま・なか・あいづ」多用な文化の中で、それぞれのお酒が生まれてきたと。
橘内
全国のお酒を飲まなくても福島県内のお酒だけで、
どんな料理にも合わせられるくらいのキャパがあるんですよね。
いわば、福島県は日本酒のデパートなんです。
小笠原
これは、福島県のお酒にしかできないと。
橘内
その通りです!
 
料理と合わせてこそ、日本酒は旨くなる
 
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小笠原
では最後に、お料理とお酒のマッチングについて教えていただけますでしょうか。
橘内
私は日本酒は料理ありきだと思ってます。
消して料理が優っているとか、お酒が優っているとかではなく、両方を楽しんでこそなんです。
でも、お料理とお酒が合わないこともあります。
基本的にお酒と料理の相性を考えると、甘い料理には甘いお酒、
しょっぱいお酒には辛いお酒をあわせるっていうのが、教科書通りの合わせ方なんです。
それとは全く別の合わせ方もあります。
甘い料理に対して辛いお酒を合わせる、しょっぱい料理に対して甘いお酒を合わせる。
そういう合わせ方もあるんです。
小笠原
なんだか少し裏ワザ的な。
橘内
甘いお菓子貯めた後に、しょっぱいもの食べたくなったりしますよね。
あの感覚とたぶん同じです。
いろんなやり方があるんですけど、
その都度、呑んで食べて、相性のいいものを探してみるのがいいと思います。
小笠原
甘い料理に甘いお酒かと思いきや、その逆もあるというと、
結局何でもいいんじゃないかって混乱しちゃいますけど(笑)
最後は、いろいろ試して自分で見つけるってことなんうしょうね。
橘内
そうですね。
お酒1本買ってきて、今日の料理に合わせてみると、
これとこれは合わないってわかったり、意外に合う組み合わせが見つかったりして、
自分でもびっくりするようなことが起きるのが“マリアージュ”です。
小笠原
“マリアージュ”、みなさんわかりますか?
以前はワインの世界でよく言われていて、最近は日本酒でも言われるようになったんですが、
お料理とお酒のベストな組み合わせのことです。
橘内
日本人なんだから“マリアージュ”じゃなくて“食べ合わせ”だろ、とか言われちゃうんですけどね(笑)。
そんな組み合わせをご自身で考えながらお酒を呑むと、より酒ライフが楽しくなると思います。
小笠原
橘内さん、今日はありがとうございました。
橘内
ありがとうございました!
 
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