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徹底したお客様目線が導いた、甲子園常連校への道。夢心酒造株式会社《福島県喜多方市》

コラム, 今月の酒蔵, 月刊fukunomo | | 2021年5月10日

「福島県なのに、どうして『奈良』なの?」
夢心酒造の代表銘柄『奈良萬(ならまん)』を手にしたお客様は、ほとんどがそう口にするといいます。

「奈良」は地名ではなく、屋号に由来しています。
夢心酒造の屋号は「奈良屋」。
そして、本格的に酒造りを始めたのは東海林萬次郎(しょうじ・まんじろう)さん。
地元では、「奈良屋の萬次郎さん」「奈良萬さん」と親しまれていたそうです。

六代目蔵元・東海林伸夫(しょうじ・のぶお)さんは、このエピソードをもとに、自身が手がけた新しい銘柄を『奈良萬』と名付けました。
今や全国の日本酒ファンに名の知れた『奈良萬』、その誕生秘話をお届けします。

代表取締役社長 東海林伸夫(しょうじ・のぶお)さん
写真が好きだったため、大学卒業後2年間は写真業界で働く。1995年に蔵へ戻り、経営に携わる。現在も写真が趣味で、商品撮影を自身で行うことも。

強豪校を研究し、地酒甲子園へ

全国に熱烈なファンを持つ『奈良萬』について、東海林さんは「ようやく地酒甲子園の常連校になりました」と話します。
地方大会を勝ち抜き、地酒甲子園に初出場、そして地酒甲子園の常連に…。
道のりは長く、決して楽なものではありませんでした。

『奈良萬』が誕生したのは1998年。
蔵の売上が毎年1割ずつ落ちていた時代でした。
このままでは生き残れない--。

東海林さんは、全国の強豪校へ目を向けました。
すると、品質管理や商品説明がきちんとしている専門店へ販路を絞っていることに気が付きます。
蔵元がどれほど良い酒を造っても、流通の仕方次第では、劣化してしまうことがあるのです。
自分たちの味をきちんとお客様へ届けるべく、『奈良萬』は販路を限定する手法を取ることにしました。

ラインナップを増やし、「ここぞ」と思える販路を少しずつ開拓し…。
1年ごとに新たな取り組みを行い、7年目にメディアに取り上げられたことを機に、一気に『奈良萬』の名は全国区になりました。
今や販路は北海道から鹿児島まで。1998年の発売から20年余りが経った今、『奈良萬』は甲子園の常連校です。

『奈良萬』の新たな挑戦

入社以来、東海林さんは造りではなく経営に専念しています。
「自分で造ってしまうと、『これが一番だ!』と押し付けてしまいそうで、いやなんです」と笑います。

もちろん納得の味であることは大前提で、しかし一番大切なのは「売れたかどうか」だときっぱり。
「売れた」というのは、つまりお客様に認めてもらえたということ。お客様が求めるものは、時代や流行によって刻々と変化します。
ですから、蔵も日々変わっていかなくてはなりません。

2016年、『奈良萬』は転機を迎えました。
当初から使ってきた地元・喜多方産の『五百万石』を定番に据えながら、他の酒米を使った限定ラベルの製造を始めたのです。
「もちろん『五百万石』には愛着があり、良い酒を造る自信もあります。しかし、ずっと同じことをしているばかりでは、井の中の蛙になってしまうと思ったんです」

他の米を知ることで、改めて『五百万石』の良さもわかるのではないか--。
東海林さんの決意は固かったものの、「本当に売れるのか」という不安はありました。
しかし蓋を開けてみれば、1年目は発売前に完売という異例の事態。
『奈良萬』へのファンの期待は予想以上のものでした。

新たな酒米を使うことは造りを見直すことにもつながり、蔵の空気も引き締まったといいます。
『酒未来』『愛山』と続き、今後も数年単位で酒米を変えるチャレンジを続けていきます。

いつも“お客様側”でいたい

東海林さんが徹底しているのが、「お客さんと同じ環境で飲む」ということです。
「蔵で飲む酒は旨くて当たり前。お客様の口に入る味を確かめたいんです」と、飲食店へよく足を運びます。
蔵と同じ酒が届いているか--。東海林さんの目線は常にお客様へ向けられています。

目指す味について伺ってみると、「助演男優賞」という言葉が返ってきました。
「酒は脇役、主役はおつまみだと思います。でも、脇役でも『あいつがいなきゃ』という人はいるでしょう。そういう存在になりたいですね」。
全国にたくさんのファンを持つ、バイプレーヤー『奈良萬』。
どうかじっくり味わってください。

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夢心酒造株式会社
福島県喜多方市字北町2932
TEL:0241-22-1266
http://www.yumegokoro.com/

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