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時間がかかっても苦しくても、ものづくりの喜びを追い求めたい。合資会社辰泉酒造 《福島県会津若松市》

「昔は、日本酒なんて美味しくないと思っていました」と穏やかに話す、辰泉酒造の四代目・新城壯一(しんじょう・そういち)さん。
好きなことをやればいい、という父の言葉もあり、大手電機メーカーでエンジニアとして働いていました。

大好きだったエンジニアの仕事を思い切って辞め、蔵に戻ったのは2003年。
酒造りを一から学び、今では経営も製造も一手に担っています。

エンジニアと酒造りには、“ものづくり”という共通点がある――。 そう語る新城さんに、酒造りへの想いを伺いました。

代表社員/製造責任者 新城壯一(しんじょう・そういち)さん
首都圏の大学を卒業後、電機メーカーでハードウェアエンジニアとして勤務。
蔵を継ぐつもりはなかったが、日本酒の魅力に気が付き、2003年に蔵へと戻る。
2011年からは杜氏として酒造りのすべてを取り仕切っている。

現場への想いから、酒造りの道へ

前職では、ハードウェアエンジニアとして電機機器の設計・開発を行っていた新城さん。
社会人になって会食の機会が増えると、日本酒を飲むことが多くなりました。
それまではむしろ苦手だった日本酒の味わいに興味を持ち、改めて自分の蔵の酒を飲んでみると…その美味しさにハッとします。
「自分がいなければ、この味が絶えてしまうのか…」という想いから、蔵に戻ることを真剣に考え始めました。

しかし、好きで選んだエンジニアという仕事です。
すぐに辞めることはできませんでした。
ただ、ちょうど技術職から管理職へとキャリアチェンジを求められていた時期だったことが後押しに。
自分の手で何かを生み出すことが心底好きな新城さん。
「酒造りは、現場がすべてです。一生ものづくりに携わることができるということが決め手になりました」

余韻をじっくりと味わって

酒造りの素人だった新城さんにすべてを教えてくれたのは、30年以上も辰泉の酒を支えてくれた先代の杜氏でした。
下働きから始まり、少しずつ酒造りを任され、そして蔵に戻って8年後、先代杜氏が引退する際に、酒造りの責任者を引き継ぎました。

先代杜氏が造り上げた辰泉の味は、辛口ながらも旨味が感じられるもの。
南部杜氏の特徴が色濃い、福島県では珍しいタイプです。
新城さんはその味をしっかりと受け継ぎながら、少しずつ自分の味を模索してきました。

数年に渡る試行錯誤の末、新城さんの造りたい酒の方向性が今ようやく絞られてきたところだといいます。
①先代から引き継いだ旨味のある辛口、②フレッシュで旨味を感じられる生酒、③柔らかく飲みやすい熟成酒の3つです。

今回お送りした『純米吟醸 京の華 瓶囲い1年熟成』は、3番目にあたります。
熟成酒というとクセのある味が思い浮かぶかもしれませんが、そんなことはありません。
米の甘さがしっかりと感じられる、とても飲みやすい一本です。

使われている酒米「京の華1号」は、新城さんのお父様が農家と二人三脚で復活に挑んだ、辰泉酒造にとってかけがえのないもの。
福島県内で使っているのは辰泉酒造だけです。
割れやすく溶けやすいという扱いの難しい酒米ですが、その分コクが出て、他の米にはない味を引き出すことができます。
特筆すべきは、長い余韻。ぜひじっくり味わってください。

生みの苦しみはものづくりの醍醐味

目標となる数値を決め、そこへ向かって試行錯誤していく…というプロセスは、エンジニアも杜氏も同じだといいます。
ただし、酒は工業製品ではなく生き物。
そこが難しいところでもあり、面白いところでもあります。

「生き物を100%コントロールすることはほぼ不可能です。予測しきれない動きもあるので、必ず理想の数値になるとも限りません」
そう話しつつ、新城さんの顔は楽しげです。

「やっぱり、ものをつくるのが好きなんです。だから、常に新しいものを生み出したい」。
その想いから、数えきれないほど試作を繰り返してきました。
お客様の声や料理との相性、世間の流行などを踏まえ、悩みながら新しい酒の開発に挑んでいます。

「何年もアイデアが出てこないなんていうことはよくありますし、せっかく良いアイデアがあっても、試作が上手くいかず、納期に追われ、切羽詰まることもよくあります。でも、振り返るとその時間がいちばん楽しいのかもしれません」  
時間がかかっても、苦しくても、ものづくりと真摯に向き合う。
これまでもこれからも、新城さんの姿勢は変わりません。

この歴史ある蔵で、さまざまな試行錯誤を繰り返してきました。

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辰泉酒造
福島県会津若松市上町5−26
TEL:0242-22-0504
http://tatsuizumi.co.jp/

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