一人の人間を感動させ、その人生を変えてしまったほどの酒〜fukunomo愛好家 林さんの今月の酒語り (2019年4月号 | 矢澤酒造店)

今月のお酒は「南郷 純米酒」

今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さん(@Nonbeekaeru)が、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!

今月のお酒は、東北の最南端・矢祭町に位置する矢澤酒造店さんから「南郷 純米酒」です。

【連載第18回目】

4月。陽の光も柔らかく、花々も咲き誇り。春も盛りになりましたね。今月もみなさまお待ちかねの、fukunomoのお時間がやってまいりました♪
今月のお酒は福島県、ひいては東北の最南端でもある矢祭町の矢澤酒造店さんから「南郷 純米酒」のお届けです!

矢祭町は、北は宮城県から福島県を縦断して茨城県北部まで連なる阿武隈高地の南部、茨城県との県境に位置した人口5700人あまりの町です。
古く江戸時代には水戸藩から奥州へと抜ける棚倉街道の重要な宿場町であり、この町から西に行けば白河藩、北へ行けば棚倉藩・石川藩・三春藩などへと続く交通の要所でした。
町内を流れる久慈川は福島・茨城両県にまたがる八溝山を源流とした清流で、この川の上流地域は茨城県内で「奥久慈」と呼ばれ親しまれ、日本有数の鮎の釣り場としても有名です。矢祭町でも、漁の解禁時期になると多くの釣り人たちが町へとやってきます。
また、県境を挟んだ隣町で、朝ドラ「ひよっこ」の主人公みね子の出身地「奥茨城村」のモデルにもなった茨城県大子町は奥久慈シャモやリンゴ、湯葉などが名産であるほか、「日本三大瀑布」の一角である「袋田の滝」もあります。

こうした自然の恵みと歴史・文化豊かなこの奥久慈の町で、天保4(1833)年から代々続く、今回の「南郷」の酒蔵。実はつい最近まで「藤井酒造店」という蔵元の名前でした。「矢澤酒造店」と名前が変わったのは、2016年末のこと。

きっかけは、もともとお酒好きで現社長の矢澤さんが東京都内で全く別の仕事をしていた頃に飲食店で偶然飲んだ、それまで名前すら知らなかった「南郷」にあまりにも感動し惚れ込んでしまったことなのだそう。
矢澤さんはそれから紆余曲折を経てとうとう矢祭町へと移住し、八代目当主の藤井さんを取締役顧問とし、九代目当主として「南郷」を継ぐことになったのでした。

一人の人間を感動させ、その人生を変えてしまったほどの酒。地元で愛され伝えられてきた秘蔵の逸品。しかし、その名前すら広くは知られていない「知る人ぞ知る銘酒」
今回お届けするのは、そんな蔵元からの一本です。そして、私のお気に入りの蔵元の酒でもあります。私は矢祭方面で出かけたときには、こちらの蔵元のお酒を必ず買って帰りますし、他媒体ではありますが、たびたびこちらのお酒を記事で取り上げていたりもします。
「一度食べれば病みつき?いわき流カツオ刺身の食べ方とは」
「初夏に楽しむ日本酒ペアリング〜林智裕の「ウチにおいでよ!」Vol.1」
※どちらも外部サイトへ移動します

では、今回も早速お酒を開けていきましょう♪
少し冷やした「南郷 純米酒」。口に含むとまず最初に、新潟の酒にも似た淡麗さ際立つ強めのキレを感じさせます。

──心地よい。

そんなシンプルな言葉が頭に回ります。
難しさがなく、ただ、ストレートに旨い。
華やかすぎず、しかし刺すような強みでは無く。あくまでも清廉でしとやかな立ち振る舞い。酒米は美山錦あたりかな?

しかし、当然ながらこれだけで終わらないのがやはり「南郷」一口目のシンプルさ、ストレートさに続いて、口の中でわずかに温められたお酒から、すーーー…っと柔らかな微香が立ち上り始めるのです。
ふわり…と微香とともに芽吹いてくる旨味と、寛ぎにも似た安心感を感じさせるブレない深いコクが口の中に沁みわたるように広がる。それはまるで、冬から春への雪解け。あたたかな陽差しに小さく可憐な花が開いていくかのように。
香りのイメージとしては…この時期には少しだけ早いものの、どことなく白詰草にも似ているような? 派手さはないながらも、控えめな中にさりげなく上品な甘さもただよう、愛らしいグリーンフローラル。一口目とは違う印象ながら、これもやはり心地よい。

そして仕上げには再び最初に感じさせたような淡麗さとキレが戻り、加えてわずかな酸味も感じさせます。これが口の中をもう一度リセットしてくれるので、次の一杯やおつまみがついつい進む!これはやはり、酒飲みさんにはたまらない味わいですね。

さすが、福島県内きっての「淡麗辛口」さが身上の、県南矢祭の酒。福島の酒らしさともいえる、やわらかな「ふくみ」のような旨さをきちんと感じさせつつも、冴えわたるキレの良さと清々しさ。味わう中で表情を少しずつ変えながら、最初から最後まで一貫しているのは「流れ続けるかのような心地よさ」。これはまるで久慈川の源流そのもの、鮎が生きる清流を思わせます。

そんな清廉な味わいの「南郷」の蔵元の中でも、今回お届けする「純米酒」は比較的味の奥行きやコク味を特に感じやすい一本。冷酒はもちろん、温度を変えて多彩な表情を引き出してあげるのもまた楽しめそうです。
このお酒の、口の中で花開く香りや旨味をより強く引き出すためには、温かさをしっかり感じやすいように、しかし熱くしすぎて香りを飛ばさないように。熱めの温泉くらい、いわゆる「上燗(45℃くらい)」にしてあげるとちょうどよさそうに思えます。これで、身体と心にジンワリジワリ…と優しく沁みわたるはず。きっと、癒されますよ。

それでは、今月もここにペアリングを合わせて楽しんでいきましょうか♪

今月のマリアージュ/ペアリングセットは

・なまためのさしみこんにゃく
・ふきのとう味噌
・ピーマン佃煮燻製
・烏賊きりこみ粕
・べったら漬け

最初の一品は、「なまためのさしみこんにゃく」。「南郷」を醸す矢祭町から北に向かって隣の塙町、有限会社ケーフーズ生田目さんからの商品です。
刺身こんにゃくは、一部では「山のふぐ」などとも呼ばれることもあるらしく。ぷりぷりの食感と爽快な喉越しが楽しめる、ヘルシーなおつまみですね。

なお、刺身こんにゃく自体はそう珍しいものではないと感じるかもしれません。しかし今回注目するべきは、コレ、原料が全て「国産・在来種のみ」のこんにゃく芋だという点です。

在来種のこんにゃく芋というのは日本古来の品種であり、製品になるまで3~5年もの年月を要する、とても手間と時間がかかる作物です。その上に栽培も難しく、病気になりやすく腐りやすい。挙句に寒さにも弱く、冬になると一旦掘り起こして、また春になると植え直す…などという手間をかけるケースもあるのだとか。この貴重な品をさらに、昔ながらの製法でこだわって作り上げた逸品が、今回お届けする刺身こんにゃく。生産量が極めて限られている貴重なこんにゃくです。

そこまでしてでも作るのは、やっぱり「おいしいから」。在来種でつくる刺身こんにゃくは、こんにゃくにとって最上級の贅沢であります。できるだけ薄くスライスして、本当にふぐ刺しのようにしてあげると特に美味しいですね!

ここに王道の酢味噌や刺身醤油を合わせて食べてみると…爽やかなのど越しとキメ細やかな味わいを楽しむことができます。
そして今回はさらに変わり種として、同梱されている「ふきのとう味噌」「ピーマン佃煮燻製」を田楽味噌のようにあわせてみます。「ふきのとう味噌」は、こんにゃくと同じ塙町のもの。「ピーマン佃煮燻製」は、矢祭町と同じ阿武隈高地を国道349号線で北に向かった先にある、小野町の品物です。小野町は小野小町の生誕伝説のほか、国内唯一のリカちゃん工場がある「リカちゃんキャッスル」がある町でも知られています。

これらの味噌は、単品だとそれぞれに苦味と塩気、甘味と燻製香という独特の味わいを強く感じさせます。単品でこんにゃくと合わせても、それはそれで強めの個性を強く楽しめるのではありますが…ここは思い切って、両方を一緒に食べ合わせてみましょう♪

すると、苦味と甘味、塩気と燻製香を持つ「合わせ味噌」と刺身こんにゃくとの間に、すこし独特の味わいが生まれます。ここに「南郷」を充てるとまた少し変化が生まれて…これがなかなか面白い味に。こうした味わいの変化を楽しめるのも、ペアリングの醍醐味ですね。(*´▽`*)

さらに、相馬・海鮮フーズさんのイカ塩辛「烏賊きりこみ粕」も合わせてみます。
塩辛はお酒のおつまみの王道ですが、この強いニオイも「南郷」の強いキレにかかるとあら不思議。ニオイよりも、旨味が強く強く先立つようになってしまいます。生臭さを消して、素材の旨味をより引き立ててくれるのです。
矢祭町の「南郷」山のお酒でありながら海産物との相性も非常に良く、私もしばしばカツオのように味と匂いが強い刺身から、上品な白身魚にまで幅広く合わせています。

これはもしかすると、ですが。矢祭町には美味しいお魚が食べられることで有名な「さかな家」さんという3代続いている鮮魚店経営の小料理屋さんがあり、県外からわざわざ訪れる人も後を絶たないほどの人気。矢祭の人は昔から海から遠い阿武隈高地に暮らしながらも美味しい魚を食べているわけで、そうした食文化が果たした影響もあるのかな…? なんて想像も膨らみます。

最後の一品は、福島県民にはおなじみの、郡山市のお漬物屋さん「小田原屋」「べったら漬け」
べったら漬けは他の地方にもありますが、この小田原屋さんのべったら漬けは、少しレシピが違います。
他の地方では白首大根を干して麹に漬けこみ作るケースが多いようですが、このべったら漬けは青首大根から糠を使って水分を抜き、蒸米で漬け込んで作るそうです。その結果、ほのかに甘くもサッパリしてべたつきにくい、軽い食感のべったら漬けになるとのこと。
確かに、食感も軽やかで箸休め的にも食べやすく、お酒にも食事にも万能に使えます。美味しいですね!

今回は東北最南端の矢祭町からのお届けでした。fukunomoを続けてきた方にとっても、福島の広さを改めて感じさせる個性のお酒と美味しさにちょっと驚いたかもしれませんね。なにしろ、一人の人生を変えてしまったほどのお酒ですから(笑)

福島のお酒はこのように、その多様性が最大の魅力の一つです。広い県内でそれぞれの地域によって、同じ県内とは思えないほどに個性に違いがあり、しかもそれぞれがそれぞれの方向を生かしつつ非常にハイレベル。
最高級ラインのお酒が国内外の大会で次々と表彰されているだけに留まらず、より個性が出やすい「地元向け」「日常を楽しむ」そんなお酒までもが「いちいちやたらと美味しい!」という素晴らしい銘酒処です。
ところが、その多彩な魅力を地元以外で味わうことは、たとえ県内在住であっても実はかなり難しい。県外ならばなおさらです。広い地域ごとに多様な個性がある…というのは、大量出荷や安定供給に向かないということと表裏一体なのです。

fukunomoは、そんな「かゆいところに眠ったまま」の魅力を、いちはやく、毎月、みなさまのお手元へとお届けしています。毎月届く「新しい!」「美味しい!」「楽しい!」の発見を、これからも楽しんで頂ければ幸いです。ぜひ、お近くのお友達なども誘ってあげてくださいね。

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