
渡部 純平さん
南会津町出身。東京の大学で醸造学を専攻し、卒業後は業務用酒販店で営業職を経験。2020年に開当男山酒造に入社。日々酵母と向き合いながら、酒造りに取り組んでいる。
福島県内有数の豪雪地帯・南会津町。
初雪は十一月、積雪は二メートルをゆうに超え、三月いっぱい雪が降り続きます。
真冬には、マイナス十度以下になることも珍しくありません。
人間がちっぽけに思えるような、厳しい自然――
そんな場所だからこそ生まれる日本酒があります。
開当男山酒造の仕込み水は、 “超軟水”の雪溶け水。
これが、雑味の少ない綺麗な味の日本酒につながっています。
南会津町の魅力がぎゅっと詰まった「GI南会津」認定の日本酒とは、どんなものなのでしょうか。
開当男山酒造・渡部純平さんの”酵母愛”あふれる酒造りを訪ねました。
■動物も微生物も、すべてが可愛い
「子どもの頃は、山で虫やカエルと遊んでいて、学校の成績は生物だけが群を抜いて良かったんです」
開当男山酒造・蔵元の渡部純平さんは、無類の生き物好き。食べることも好きだったことから、生物と食の両方を学ぶことができる東京農業大学へ進学します。そこで出会ったのが「酵母」という存在。顕微鏡を覗き込んでは「可愛いなぁ」とつぶやく毎日で、卒業論文のテーマも酵母についてでした。
酒造りを始めてから、酵母がますます愛らしく感じるようになったとか。こちらの想定通りに動いてくれない”おてんば”なところもたまりません。いずれは、卒業論文で研究した酵母を使った酒造りを―と構想しています。

■南会津を日本酒の一大ブランドに
2025年5月、南会津町内4つの蔵の日本酒が「GI南会津」に認定されました。「地理的表示GI」とは、その地域ならではの産品を知的財産として認める国の制度です。「GI南会津」認定の条件は、「地元の米・水・蔵で醸された酒であること」―つまり、南会津の風土が詰まった一本ということ。ワインでいうボルドーやシャンパーニュのように、「南会津」という名が、酒の味わいと品質を保証する目印になるのです。
「東京で暮らしたからこそ、地元・南会津の魅力に改めて気づきました。冬は本当に本当に寒いですが、だからこそ、人の温かさを感じることができます。決して大きな町ではありませんが、ぜひ南会津を訪れて、自然を感じながら、この土地で生まれた酒を味わってほしいです」

■”名脇役”であり続けたい
今月お届けしたのは『開当男山 特別純米酒 夢の香』。穏やかな香りと、食事に寄り添う優しい味わいが魅力のお酒です。
「お酒って、必ずしも主役である必要はないと思っています。料理とともに、楽しい時間を引き立てる”名脇役”であれば、と」
この考えは、開当男山酒造が長年大切にしてきた信念です。時代や流行が変わっても、この想いだけは揺らぐことなく守り続けています。一方で、新しいことに積極的にチャレンジする姿勢も持ち合わせているのが面白いところ。「GI南会津」が生まれ、南会津での酒造りはさらに盛り上がっていくことでしょう。今月のお酒が気に入ったら、ぜひ南会津町へ足を運んでみませんか。
