酒とともに文化を醸す -大和川酒造店(福島県喜多方市)

老舗酒蔵の次代を担う兄弟の二人三脚

 江戸時代中期より酒造りに携わり、今年で創業226年。「大和川酒造店」はいまや、喜多方を代表する酒蔵のひとつとして、広く知られる存在となりました。

「奈良から大阪湾に流れ込む川のひとつが大和川。その地から会津に渡ってきた先祖が、故郷を懐かしむ意味で付けたと言われています」と、屋号の由来を語ってくれたのは、現当主・9代目佐藤弥右衛門さんの長男で専務の雅一さん。全国各地、果ては海外にまで足を伸ばし、積極的に営業を行っているというお話を聞くにつけ、フロンティア精神あふれるご先祖の血が受け継がれていることを感じます。

子ども時代、印象に残っているのは、造りの時期に家の中に漂っていた米を蒸す香りと、早朝から忙しく立ち働く蔵人たちの姿。酒蔵ならではの環境で育つうちに、蔵を継ぐ覚悟も自然にできていったという雅一さん。8代目が亡くなったのをきっかけに蔵に入ると、その後を追うように弟の哲野さんも蔵に戻り、同じく酒造りの道を歩みはじめました。現在は主に営業面を雅一さん、造りの一切を杜氏として哲野さんが担当し、兄弟揃って蔵を盛り立てています。

「意志の疎通はラクですね。私が兄なので言いたいことを言えるところとか(笑)。実は会長を務める9代目と、先代の杜氏で現社長も兄弟なんです。不思議な一致ですよね。弟はまだ杜氏としては若手ですが、全国新酒鑑評会では6年連続金賞の記録も守っており、造りの技術は他の蔵と比べても遜色ないと思います」

 一方、兄のもとで伸び伸びと酒造りに励む哲野さんも、「先代から受け継いだことはもちろん、これからは自分たちの色を出すことにも挑戦していきたいですね」と、意欲は十分。役割は違えど、それぞれに蔵の未来を背負うふたりの二人三脚が頼もしくもあります。

地元・喜多方に密着した酒蔵であるために

 大和川酒造店の酒造りの特徴のひとつ。それは、自社栽培された原料米を使う「田んぼからの酒造り」を実践することにあります。2007年に設立した農業法人「大和川ファーム」では、喜多方市内の約50町もの田んぼと畑で酒米のほか、うるち米、そばなども栽培しています。

「喜多方で酒米を作ることの何がいいかというと、酒と同じ水で米が育つこと。そればかりか、道具を洗う水も仕込み水も同じ、果ては杜氏もその水を飲んでいるわけですから、すみずみまで水が馴染んでいるところです。東北では育てるのが難しいといわれている山田錦も、栽培をはじめて15年ほどになりました。最初は思うようにいかず苦労しましたが、少しずつ良くなってきています」

 また、1990年には最新鋭の設備を備えた醸造蔵を新設。蔵は酒造りに欠かせない豊かな湧き水を育む飯豊連峰にあやかり、「飯豊蔵」と名付けられました。現在では、製造から出荷までを一貫してここで行っています。それに伴い、創業当時の面影を残すかつての蔵は「北方風土館」として一般に開放。資料館や売店も設け、連日観光客が訪れ賑わいを見せています。

「酒蔵はただの工場ではなく、長い歴史の中でその土地の文化をも体現しているもの。それをふまえ、社会にどう貢献できるかは私たちのミッションのひとつであると考えています。蔵でイベントを開催したり、貸し出したりしているのもその一環です」

 大和川酒造店では、代々の当主が喜多方の町づくりに深く関わってきました。その思いを絶やすことなく、次代を担う雅一さんも「なんでもやるべ(会津弁でなんでもやりましょうの意)」の精神を持ち、フットワーク軽くさまざまなことに挑戦していきたいと言います。

「これからは、ただ飲んでもらうだけではなく、どういう場所で飲むか、何をしながら飲むのか、何を食べながら飲むのか、そういうことも酒蔵から提案していくことが必要。海外のお客さんには特に、有効なアピールになると思っています。また、私は趣味で若者向けの音楽イベントによく行くのですが、ああいうところには基本的に日本酒は置いていません。でも、出してみたら意外と評判がいいんですよ(笑)。日本酒の未来のためには、若い人に飲んでいただくことが大事。音楽や若者文化との融合が図れるような商品開発もしていけたらいいですね」

 長い伝統を大切に受け継ぎながら、新しい感性も取り入れる。日本酒の未来はこうして拓かれていくのかもしれません。

大和川酒造店 北方風土館
福島県喜多方市字寺町4761
TEL:0241-22-2233
http://www.yauemon.co.jp/
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