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時代が変わっても変えない、変わらない、人に寄り添う酒。寿々乃井酒造店《福島県岩瀬郡天栄村》

コラム, 今月の酒蔵, 月刊fukunomo | | 2020年12月11日

世界に認められる「天栄米」の産地、米どころとして有名な天栄村。
この地に1811年に創業した寿々乃井酒造店は、地元の水と米を使い、気候風土を生かした酒造りで知られています。

およそ9割が地元で消費されるという寿々乃井酒造店の酒。
もともとは岩手県から招いた南部杜氏のもと、酒造りを行っていました。
その技を代々受け継ぎ、現代に至るまで大切に守り続けています。

寿々乃井酒造店が酒造りにおいて大切にしているものとは――? 広報の鈴木理奈さん、杜氏の永山勇雄さんに伺いました。

(写真右・鈴木理奈さん)
結婚を機に寿々乃井酒造店へ。蔵元自ら酒の魅力を発信するべく、近年ではイベントへの参加やSNSの活用に力を入れている。

(写真左・永山勇雄さん)
18歳で寿々乃井酒造店に入社。米農家でもあり、酒造りと米づくりの二足のわらじを履いている。

受け継いできた味を、大切に大切に守る

寿々乃井酒造店の出荷の8割は普通酒です。その名もずばり「寿々乃井」と名付けられた普通酒は、甘めの味わいが特徴。地元・天栄村を中心に長年愛されてきました。

「今の風潮からいうと、もしかすると普通酒は“ダサい”お酒なのかもしれませんね」と鈴木さんは笑います。

「でも、毎日でも気軽に飲むことができるのはやっぱり普通酒。一番手に取りやすいものだからこそ、真面目に、丁寧に造り続けたいんです」

しかし、「変えない」ことは簡単ではありません。辛口の酒が流行った時代には、「もっと辛くしてもらえないか」という声が寄せられました。それでも造りを変えることはなく、「福島県で一番甘い酒だ」と言われたことも。

「これが代々続く寿々乃井の味ですから。変えず、変わらず、ずっとこの味を守っていきます」

流行に左右されず、時代が変わってもこの酒だけは変わらない――。この姿勢が、「寿々乃井」が長年に渡って飲み継がれている理由ではないでしょうか。

酒造りも米づくりも、おんなじ

寿々乃井酒造店の蔵人は、米農家でもあります。秋に米の収穫を終えると、次は酒造りに取りかかります。「うちの蔵人を見ていると、米も麹も“面倒を見る”という言葉がぴったりです」と鈴木さんは絶対の信頼を寄せています。

永山さんは、18歳の頃から寿々乃井酒造店で働いてきました。当初は瓶詰めなどを担当していましたが、やがて酒造りに携わるように。数年前に先代杜氏の後を引き継ぎました。

「酒造りと米造りはおんなじですよ。どちらも生き物だから、何十年やっていても難しいんです」

永山さんが特に手をかけているのは、酒米「亀の尾」。この永山さんのお米を使って、「寿月 純米吟醸しずく 亀の尾」が造られています。「亀の尾」の稲穂は背丈が胸のあたりまで届くほど伸び、とても倒れやすいため、育てるのが本当に大変なのだそうです。しかし、これも先代杜氏が持ってきてくれたもの。永山さんは、酒造りと共に米づくりの技術も大切に引き継いでいます。

主役はお酒ではなく、人

「寿月」というブランドは、寿々乃井酒造店の日本酒をもっともっと多くの人に知ってもらいたいとつくられたものです。

「うちのお酒って、どれも遠慮深いというか、奥ゆかしいのが特徴なんです。太陽光のようにピカピカ光るのではなく、月の光のように、どこか影を帯びた綺麗さというか…」

主役ではなく、引き立て役。今回お届けした「寿月 ひやおろし」もそうだといいます。水のように飲みやすいけれど、きらきらとした余韻が印象的。どんなシーンにも食事にも馴染むお酒です。

「お酒は主役じゃなくていいんです。メインは人。大好きな友人や家族と過ごす時間に寄り添うお酒でありたいですね」

月のような控えめな輝きを持った美しい一本です。あなたはどんなシーンで、どんな人と楽しみますか?

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寿々乃井酒造店
福島県岩瀬郡天栄村牧之内矢中1
TEL.0248-82-2021
https://www.facebook.com/suzunoisyuzouten/

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