父から娘300年の歴史と想いが紡がれる町中の酒蔵 佐藤酒造店《福島県郡山市》

JR郡山駅から徒歩15分程度というアクセス至便の場所にありながら、外向きのPRをせず、知る人ぞ知る酒蔵として謎のベールに包まれた佐藤酒造店。

建物はかつての奥州街道沿いに位置し、当時の二本松藩主丹羽氏が通りかかった際に、敷地内の美しい藤と井戸を見て、今に続く『藤乃井』の銘を与えられたそうです。

蔵元の佐藤彦十郎さんと、娘さんの佐藤酵さんのお二人にお話を伺いました。

代表 佐藤 彦十郎さん

現在14代目。長年働いていた南部杜氏の薫陶を受け酒造りに携わるほか、酒販店の立ち上げも行う。4代前ごろから受け継がれている名前「彦十郎」を襲名している。

佐藤 酵さん

蔵の一人娘。18歳で蔵に入り、酒造りはもちろん、広報や事務など蔵に関わる仕事全般に携わり、彦十郎さんと共に蔵を盛り立てている。

佐藤彦十郎さん 「佐藤酒造店の創業は1710年(宝永7年)で、300年以上の歴史のある蔵です。私は宮城県古川市の出身で、33年前に婿入りをしました。最初は、醸造試験所(※現在の酒類総合研究所)に行って勉強して。戻ってからは、酒造りをしながら配達もして、酒蔵の仕事を一から全部覚えました。」

佐藤酵さん 「今年で31歳になります。地元の高校を卒業して、北海道の大学に進学予定だったのですが、入学式の直前に母が亡くなってしまい、急遽、進学を取りやめて18歳で蔵に入りました。造りを学ぶために、県の清酒アカデミーも卒業しました。未だに杜氏さんの手伝いくらいしかできていませんが、一つずつ学んでいます。小さい頃から、将来はお酒を造るしかないなと思っていました。継ぐことに対して嫌な気持ちはなかったですね。」

彦十郎さん 「今でも造りにはかかわっていますが、ほとんどは杜氏に任せています。2年前に前の杜氏が引退して、千葉県の寒菊銘醸に勤めていた高橋正芳杜氏をスカウトしました。全国新酒鑑評会で10年連続で金賞も獲っている腕利きの南部杜氏です。引退するつもりだったようですが、私の後を継ぐ娘や、若い蔵人が一人前になるまで仕込んでもらいたいと「5年いてください」と頼み込んで来てもらいました。高橋杜氏が来てから、20年ほど造っていなかった大吟醸造りを再開しました。『ふじや彦十郎』も、昔からある銘柄ですが、味わいは過去のものとはまったく違います。」

酵さん 「杜氏を招いたのとほぼ同時に、大規模な設備投資をしました。蒸し釜・製麹室・ヤブタ(式圧搾機)・冷蔵庫等を一新して、内装もすべて手を入れました。できたばかりの大吟醸を呑んだ時は『うちの蔵でこんなにきれいなお酒が造れるんだ』と感動しました。そういう意味でも設備投資は意味があったと感じます。ただ、大きな投資をしたので、それを継いでいくことへのプレッシャーはあります。なおさらがんばらないといけないなと。蔵の名前がまだまだ知られていないので、知名度ももっとあげていきたいですね。規模を大きくして品質が悪くなっては意味がないので、しばらくは今の大きさのまま、この味をキープしていきたいと思います。癖がなくて飲みやすく、日本酒が苦手な人の入り口にもなりやすい酒質だと思います。吟醸造りはすべて兵庫県産の山田錦を使っているので、そのうち、福島県産米を使った吟醸造りにもチャレンジしていきたいです。」

佐藤酒造店
福島県郡山市富久山町久保田5
TEL.024-922-1763
https://satoushuzouten.jp/

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