fbpx

現状に決して満足せず、前進し続ける酒蔵。笹正宗酒造《福島県喜多方市》

コラム, 今月の酒蔵, 月刊fukunomo | | 2020年9月7日

「蔵のまち」として知られる喜多方市。
味噌や醤油の貯蔵庫として、漆職人の作業場として、そして酒蔵として、現在も多くの蔵が現役です。

飯豊山(いいでさん)の伏流水に恵まれたここ喜多方に創業し、200年を超える笹正宗酒造。
社長を務めるのは岩田悠二郎さん、兄である光太郎さんが専務を務めています。

左から、専務の岩田光太郎さん、社長の悠二郎さん。

お二人とも一度はまちを出たのですが、蔵を継ぐべく喜多方へと戻ってきました。 若くして蔵を継いだ岩田悠二郎さんに、蔵と喜多方のこれからについて伺いました。

明日隕石が落ちてくるなら、逃げるより壊す方法を考える

もしも明日、地球に隕石が衝突するとしたら、あなたは最後の1日をどんなふうに過ごしますか? 笹正宗酒造の代表・岩田悠二郎さんは、「ぶっ壊す方法を考えますね」と話します。後退はもちろん、現状維持もしない、常に前に進みたい――。それが悠二郎さんの経営哲学でもあります。

東京で会社員をしていた悠二郎さんが蔵に戻ったのは、2015年、29歳の時でした。ぼんやりと「40歳くらいになったら戻ろうか」と考えていましたが、ふと飲んだ自蔵の酒の味に愕然としたといいます。「東京の飲食店で飲む日本酒と比べて、明らかに劣っていました。これでは絶対に売れない。売れなければ蔵がなくなってしまう…と焦りました」。

蔵を継ぐことを決意したものの、日本酒造りに関しては素人同然。福島県清酒アカデミーへ通って誰彼かまわず教えを請い、学んだことはすぐに蔵で実践。慣習にとらわれることなく、次々と新しい手法を取り入れていきました。

その結果、蔵に戻ったその年に、自ら立ち上げた新銘柄「ささまさむね」で「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」のゴールドメダルを受賞。笹正宗酒造の名が世に広まるきっかけとなりました。「まだまだ未熟な酒でしたから、よく賞をもらえたな…と思います。でも、あの賞があったから今がある。大変でも、がんばっていれば道は拓けていくだろうと信じられるのは、あの賞のおかげです」。ゴールドメダルは、悠二郎さんにとって立ち返る場所なのです。

蔵の名前を冠した日本酒たち

笹正宗酒造の代表銘柄は3つあります。今回お届けした「笹正宗」は、かつての杜氏が残したレシピを極力そのまま生かし、伝統的な味わいを大切にしたもの。「IWC」を受賞した「ささまさむね」は、味わいをどんどん進化させていきたいと設計した勝負作。「ササ正宗」は、上品な甘さで洋酒のような楽しみ方もできる一本。どれも蔵の名前をそのまま付けており、そのシンプルさには、意気込みと自信が感じられます。

「うちの酒は、冷やして飲むのがおすすめです。ただ、飲み方をうるさく言うつもりはありません。夏に燗酒を飲んだっていいでしょう。楽しく飲むのが一番です」。よく料理をすると言う悠二郎さん。「自分でつくった料理と飲むのは格別です! ぜひいろいろな食べ合わせを試してみてください」。

喜多方の町に開かれた酒蔵へ

水と、そこから育まれる自然に恵まれ、そして切磋琢磨する酒蔵仲間がいるこの喜多方は、悠二郎さんにとってかけがえのない場所です。使っていない蔵を住民に貸し出す、主屋で落語をするなど、町と蔵とがもっと深く繋がるための企画をいろいろと構想しているところだといいます。

そして、いずれは米づくりを行うのが悠二郎さんの夢です。「酒造りを極めていくと、やはり米にたどり着きます」。実は笹正宗酒造は、もともと米づくりを行う豪農でした。ルーツに還る…ということではありますが、常識にとらわれない悠二郎さんが行うことなら、きっとユニークな取り組みとなるのでしょう。

ーーーーーーーーーーーーーーー
笹政宗酒造
福島県喜多方市上三宮町上三宮675
TEL.0241-24-2211
http://sasamasamune.com/

fukunomoに申し込む