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二本松の水と米で醸される、地元のための酒。檜物屋酒造店《福島県二本松市》

コラム, 今月の酒蔵, 月刊fukunomo | | 2020年8月25日

日本百名山の安達太良山(あだたらやま)の麓にあり、市街地を一級河川である阿武隈川が流れる二本松市は、福島県を代表する城下町のひとつです。

この二本松市に蔵を構えて140年超の檜物屋(ひものや)酒造店。かつては檜を使った曲物づくりを生業にしていたことが社名の由来です。

檜物屋酒造店の酒は、福島県外ではなかなか出会うことができません。かつては檜を使った曲物づくりを生業にしていたことが社名の由来です。

これほどまでに地元で愛される理由とは、いったいどこにあるのでしょうか。 蔵元の斎藤一哉さんのお話からは、地元への強い想いを感じることができました。

地元の人に毎日飲んでほしい 

「この辺りのお店で、『千功成(せんこうなり)』を置いていないところなんてありませんよ」――二本松駅前の飲食店で聞いたその一言が、檜物屋酒造店と地元との関係をよく表していました。「千功成」は檜物屋酒造店を代表する銘柄です。たとえメニューに記載がなかったとしても、これを置いていない飲食店は二本松市にはほとんどないのだそう。居酒屋や定食屋はもちろん、スナックにも一升瓶が置かれているといいます。

蔵元の斎藤一哉さん。

「日本酒はうちの酒しか飲んだことがない、という方も少なくありません。そういう声を聞くと、もっと良い酒を造らなければ…と身が引き締まります」と斎藤さん。毎日飲んでくれる地元の人たちに応えたいという想いから、大吟醸などの高級酒ではなく、気軽に手に取ることのできる普通酒に力を入れています。地元産にこだわり、原料は安達太良山の伏流水と、二本松産の食用米「天のつぶ」。酒米に比べると食用米で酒を造るのは手間が掛かりますが、「出荷本数の多い普通酒にこそ、地元のものを」という想いから、「天のつぶ」を使うようになりました。そのこだわりが詰まっているのが、今回お届けした「千功成 金瓢(きんぴょう)」です。

大吟醸酒から普通酒までさまざまな種類のある「千功成」。その名は二本松藩主の先の君主だった太閤秀吉の馬印「千成ひょうたん」に由来していて、「千の功績が成る」という縁起の良い意味が込められています。「金瓢」は、甘口とはいえしつこくなく、飲み疲れのしない味わいが特徴です。「この辺りの人は、塩辛くて濃いめの味付けが好きなんです。そういうおかずに負けず、かつ毎日飲んでも飽きない酒を目指して、この味わいにたどり着きました」。日々愛飲してくれる人がたくさんいるからこそ、この「金瓢」が生まれたのです。

祭りとともに在る酒

二本松では、十月に「二本松の提灯祭り」が開催されます。「盆や正月は帰らなくても、祭りの時には必ず帰る」といわれるほど地元に根付いたお祭りです。準備期間も含めると一週間ほどにも渡り、長期休暇を取って参加する人も珍しくありません。その祭りに欠かせないのが「千功成」。斎藤さんは「みんな一週間飲みっぱなしですよ」と笑います。子どもの頃からずっと、祭りで皆が「千功成」を飲み交わす姿を見てきました。一時は福島を離れた斎藤さんですが、祭りと酒を楽しむ人たちの表情が忘れられず、「二本松からこの酒を失くすわけにはいかない」と蔵を継ぐ決意をしました。

古くから二本松に伝わる物語

もう一本の「安達ヶ原 黒塚」も、二本松ならではのお酒です。二本松市には「安達ヶ原の鬼婆」という伝説があり、この鬼婆が葬られた場所が「黒塚」と呼ばれています。悲劇の物語なのですが、浄瑠璃や歌舞伎で繰り返し語られており、二本松に暮らす人にとってはとても身近なストーリーなのです。鬼婆が描かれたインパクトのあるラベルは、一度見ると忘れられません。こちらは度数が18度とやや高いので、夏は氷を入れてロックで飲むのもおすすめだとか。

家にお客様が来れば、「お土産に持たせてやろうと思って」と檜物屋酒造店に酒を買いに行く――。それが、何十年も続く二本松市の日常です。「金瓢」も「黒塚」も、地元の人に愛されるあまり、県外ではなかなか飲む機会がない貴重なお酒。ぜひ二本松に想いを馳せて、楽しんでください。

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檜物屋酒造店
福島県二本松市松岡173
TEL.0243-23-0164
http://senkonari.com/

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