日本酒のロマンを追い求めて 叩き上げの蔵元が率いる 独自進化を続ける奥会津の酒蔵 花泉酒造《福島県南会津郡南会津町》


日本酒のタンクには、1号・2号と順に番号が振ってあります。
『号』という漢字の上下を分解すると、『口』と『万』の字に分けられますが、『口』を、カタカナのロに置き換えると、続けて「ロマン」と読める。

「日本酒にはロマンがある。だから『ロ万』と書いて『ロマン』と読むお酒を造った」。

そんな熱い想いを持っている花泉酒造の代表が、星 誠さん。

星さんは、福島の酒蔵の中では珍しい、社員として酒蔵に入った後に代表に就いた叩き上げの蔵元です。花泉酒造と星さんの、これまでの歩みを尋ねてみました。


代表社員 星 誠さん

当社の創業は大正9年。近隣に住んでいた篤農家5名で立ち上げた蔵です。当時は、今のように道路網が整備されておらず、なかなか村までお酒が入ってこなかった。それだったら自分たちでお酒造りを始めようというのがきっかけだったと聞いています。

私は、昭和51年に旧南郷村(現在の南会津町)に生まれました。南会津高校を卒業後は、近所にある自動車整備会社に勤め、23歳になった年に花泉酒造に入社しました。入社当時は、配達の仕事がメインで、1日に2〜3千本ものお酒を運んでいました。でも、だんだんと出荷量が減っていき、配達の合間に酒造りの手伝いなどもするようになって、「この会社、このままで大丈夫かな」と心配になりました。そんな折に、当時の会長や社長と話す機会があり、「このままじゃだめだ」と、自分の感じていることを進言してみたところ、「じゃあ、お前がやってみろ」という話になり、28歳からは経営側に回るようになりました。

その後は、うまくいかないことばかりでしたよ。現場にいる人はみんな歳上。28歳の若造の話なんて、誰も聞いてくれません。それでも、勉強して努力して、徐々にでも実績を伸ばしていけば、皆に信じてもらえるんじゃないか。そう思いながら、地道にやるしかなかった。ただ、誰も信じられなくなった時期もありました。

そんな中で、支えになっていたのは、『飛露喜』を造っている廣木健司さんや、『冩楽』を造っている宮森義弘くんの存在でした。『飛露喜』を初めて呑んだ時、こんなに美味い酒があるのかと、衝撃を受けたのを今も鮮明に覚えています。『冩楽』を造っている宮森くんは自分と同い年ですが、こんなに熱い想いを持って酒を造っている同級生がいたということも大きな驚きでした。いつか、この2人に認められるような酒を造りたい。その思いが、当時の自分の支えとなっていました。

経営側に回ってから約4年、社内のメンバーとも徐々に信頼関係が深まってきて、平成19酒造年度に『ロ万』シリーズが誕生しました。ロ万シリーズは、福島県オリジナルのうつくしま夢酵母を使い、お米は全て会津産米で、純米吟醸または純米大吟醸のみを製造しています。ロ万をきっかけに、全国の方に花泉酒造を知っていただいたり、お取引をいただく機会も徐々に増えてきました。ロ万を造ることで高めた技術は、地元中心に流通している伝統的な銘柄『花泉』シリーズにもフィードバックして、花泉の酒質レベルも、年々高まっています。

うちで造るお酒は、すべて『もち米四段仕込み(米)』という手法で造っています。日本酒は通常、水・麹・蒸米を3回に分けて仕込む「三段仕込み」で造られますが、花泉酒造のお酒は、その後に、蒸したもち米を熱いまま仕込んでいます。全量をもち米四段でやっているのは、全国でも私たちだけだと思います。

蔵が陸の孤島のような場所にあって情報が入ってこなかったから、ガラパゴス的な進化を遂げたなんて言われることもあります。独自に進化するしかなかったのですが、結果的に、それが花泉の良さになっていったのだと思います。ただ、まだまだ進化できる余地はあります。『もち米四段仕込み』のこだわりは変えず、今後も独自の進化を続けていきたいですね。

花泉酒造
福島県南会津郡南会津町界中田646−1
TEL.0241-73-2029
http://hanaizumi.ne.jp/

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